児童ポルノ、スマホ使用の危険啓蒙を
児童ポルノの摘発事件と被害者の数がともに過去最多となった。スマートフォン(スマホ)を使っていての被害が目立つ。新年度を控えて、新たに買い与える保護者が多いが、子供がスマホを使うことの危険について改めて注意を呼び掛けたい。
昨年の被害者は過去最多
全国の警察が昨年摘発した事件は1644件で、前年より48件増えた。また、被害者として身元が特定された18歳未満の子供は646人で、前年より115人も増えた。いずれも統計の残る2000年以降で最も多かった。
急増したのがスマホを使って加害者と知り合った子供の数だ。前年より157人増えて、211人もいた。また、既存の携帯電話を含めると331人に達して、親族など知人以外から被害を受けた子供の9割近くを占めている。
内閣府が昨年末行った調査によると、高校生のスマホ所有率は8割以上に達している。この勢いだと、今年末には9割を超えるだろうが、安易にスマホを与えている保護者が多いのが気掛かりだ。
スマホのフィルタリング設定が複雑なこともあって、その利用率が55%と一昨年よりも下がっている。しかし、児童ポルノ被害に遭う子供が多くなっていることでも分かるように、子供のスマホ利用には大きな落とし穴が潜んでおり、注意が必要だ。使う場合のルールについて、家庭でよく話し合うなど、保護者は子供に与えっぱなしにしないでほしい。
最近増えているのは、少女が無料通信アプリ「LINE」で知り合った男に、わいせつな画像を撮影される被害のほか、自分の裸を撮影してメールで送る「自画撮り」で、昨年は身元が特定された被害者の42%を占めた。中には「有名タレントに会わせてやる」と、嘘の話を持ち掛けられて被害に遭うケースもあった。こうした被害を防ぐには、子供に対するモラル教育に加えて、保護者にもスマホ利用の危険性などについての啓蒙(けいもう)が必要だろう。
一方、児童ポルノに関しては立法府の怠慢も指摘しなければならない。強姦や強制わいせつの被害を受けた際に、画像や動画を撮られるという悪質なケースが多いにもかかわらず、現行法は「単純所持」を規制の対象外とする“欠陥”を抱えている。凶悪な犯罪と深く関わって製造される児童ポルノは、趣味で所持することも容認できないというのが国際的な流れだ。
このため、わが国でも昨年5月、自民、公明、日本維新の会の3党が単純所持を禁止し、これを処罰するための児童ポルノ禁止法改正案を衆院に提出したが、継続審議のままになっている。「表現の自由」を盾に強硬に反対する勢力があるからだが、内閣府の世論調査では、単純所持を禁止することに9割が賛成している。
法改正で規制を強化せよ
児童ポルノはネット上に一度拡散すれば、すべて消去するのは不可能だ。被害者は一生苦しめられることになる。そんな悪質な画像や動画は、法を改正しより厳しく規制すべきだというのが国民の要請である。
(3月24日付社説)