「LGBT」「女性の社会進出」への関心最低を示した読売の世論調査
日本の女性は不幸?
左派メディアや政治家たちが今年一年、男女平等で「日本は遅れている」と、あしざまに言うときに使った数値に、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」がある。日本は156カ国中120位がそれだ。
この指数は3月に公表されたが、春以降、何度も聞かされて、耳にたこができてしまった。秋の衆院選でも「ジェンダー平等」を公約に掲げた野党候補者たちは「世界で120位」を連呼していた。内閣府男女共同参画局も「先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果」と言うのだから、日本の女性たちはよほど不幸なのだろうと思ってしまう。
衆議院選挙では、立憲民主党の枝野幸男代表(当時)は「多様性を認め合う差別のない社会」の実現には「政権を代えないといけない」と訴えた。現政権下で不幸な女性が本当に多いなら、政権交代が実現してもおかしくない。しかし、選挙結果はご存じのように、逆に議席を減らし、枝野氏は代表の座を降りざるを得なくなった。
メディアや政治家がいくら「ジェンダー平等」を叫んでも、肝心の有権者はあまり関心がないことを見事に示した世論調査の結果が出た。
読売新聞社と早稲田大学先端社会学研究所が衆院選後に、全国の有権者3000人を対象に共同で行った世論調査の結果を、読売が15日付で掲載した。その概要は1面に載った。そのポイントは、65%が政権交代が時々起きた方がよいと「思う」と答える一方で、近い将来政権交代が起きるとは「思わない」が75%も占めた。政権交代の可能性について、有権者が冷めた見方をしていることを示している。ただ、これは想定内で驚かない。
3%と6%にすぎず
筆者が注目したのは、14面に載った質問文と、それに対する回答割合の一覧で、中でも衆院選の争点として「とくにどのような問題を重視したか」という質問に対する回答。五つまで選べる形式で、最も多かったのは「景気や雇用」65%、次いで「医療や年金、介護など社会保障」61%、「新型コロナウイルスなど感染症対策」50%と、上位三つは予想通り。「おやっ」と思ったのは「性的少数者(LGBT)の権利」が3%で、最低だったこと。高くはないと思っていたが、ここまで低いとは思わなかった。
また、「女性の社会進出」も6%で下から3番目と極端に低かった。なぜか分からないが、選択項目に「選択的夫婦別姓」(夫婦別姓)がなかったから、「女性の社会進出」を選んだ人の中には夫婦別姓への賛成派が含まれているとみていいだろう。ちなみに、下から2番目は「震災からの復興」5%だった。
朝日や毎日、それにNHKをはじめとしたテレビもLGBTの人権に関する法律整備や夫婦別姓などジェンダー平等が争点だと、選挙前も選挙中もさんざん煽(あお)った。そこで思い出すのは、衆院選公示の前日10月18日に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会。
同クラブの企画委員で、元毎日新聞政治部長の佐藤千矢子氏がLGBT理解増進法案と夫婦別姓を導入するための法案を来年の通常国会に提出することに賛成するかと質問したが、9党首のうち岸田文雄首相(自民党総裁)だけが「賛成」の挙手をしなかった。そして佐藤氏は「二つとも岸田さんだけ、手をお挙げになりませんでした。それぞれ理由を」と説明を求めた。
妥当だった首相判断
岸田首相は夫婦別姓について「街で生活している多くの方々がどこまで意識が進んでいるのか、政治に関わる立場からしっかり考えていくことが重要」と答えた。LGBT理解増進法案についても「提出の時期を確定することは避けたい」と述べた。翌19日付朝日は1面トップで、「全党首の中で首相のみが賛成しなかった」と、自民党はジェンダー平等の実現に後ろ向きであると印象付けるような書き方をした。
今回の読売の世論調査は、この二つのテーマについて、国民の関心はあまり高くないことや、理解も進んでいないとした岸田首相の判断が妥当だったことを裏付けるとともに、国民の意識と左派メディアと政治家の間に、かなりの乖離(かいり)があることも浮かび上がらせた。
(森田清策)