現実活動と憲法解釈
日米安全保障条約第6条には「日本は、日本の安全と極東の平和と安全の維持のため、米軍に基地提供の義務を負う」と明記されている。
日本国内の米軍基地・施設84カ所の存在は、軍事行動を行う米軍を支援していることと同じであり、日本が集団的自衛権の行使をしてきたと見るべきだろう。
元防衛大校長の西原正氏も『産経新聞』2月3日付で指摘しているように、例えば、インド洋の海賊対処において、海上自衛隊が米国や友邦国の艦船 に給油を行ったことは、「それらの国の軍事行動を直接支援したのではなかったので、集団的自衛権の行使ではなかった」と、日本政府は解釈してきたが、海自から給油を受けた外国の艦船は、日本が集団的自衛権を行使しなかったとは思っていないはずだ。
ソマリア沖やアデン湾での海賊対処にも日本は、護衛艦や対潜哨戒機P3Cなどを派遣し、活動を続けている。
以上のような活動は、すべて集団的自衛権の行使ではないのか。
現場ではすでに行使されているのであり、憲法解釈が現実の活動に追いついていないのである。
日本は数多くのPKO(国連平和維持活動)に参加をしてきた。今まで一度も自衛隊の宿営地や活動エリアが、テロリストや反政府組織等から攻撃を受けなかったのは、不幸中の幸いと言えるだろう。
しかし、将来もPKO活動に派遣された自衛隊が攻撃を受けないという保証はどこにもない。
自衛隊が攻撃されれば、隣接部隊に救援要請をするだろうし、他国部隊が攻撃されれば、自衛隊に救援要請がある場合も考えられる。
その時、自衛隊が他国部隊を救援する行為は、集団的自衛権の行使にあたり、憲法違反となるので、救援できないと断れば、日本がPKO活動で積み上げてきた国際社会での高い評価は、いっぺんに崩壊するに違いない。
日本は不毛な集団的自衛権論議から早く卒業するべきだ。世界中の笑い者にならないためにも。
(濱口和久)