元首相の“利中”発言

 2月27日、村山富市元首相は、日本記者クラブで会見した際、沖縄県・尖閣諸島について、次のように発言した。

 「どちらに占有権があるのか解明のしようがない。日本にいわせれば日本の領土だし、中国がいえば中国の領土だっていうし、きりがない。台湾を含めて、近辺の国がお互いに共有して、幸せのために生かしていくことができれば一番良い」。

 同じような発言を鳩山由紀夫元首相も、政界引退後に中国を訪れるたびに繰り返している。

 さらに言えば、鳩山氏は国会議員時代の平成9年、西村眞悟衆議院議員が日本の国会議員として初めて尖閣諸島に上陸したとき「あれは日本の一部の右翼がやったこと」と、北京で中国要人に説明したこともあった。

 尖閣諸島は、歴史上も国際法上も日本の領土である。2人の発言は中国を利する発言そのものである。

 現在、尖閣諸島周辺の東シナ海は、海上自衛隊と海上保安庁が警備及び警戒任務に緊張感を持って24時間勤務で当たっている。

 2人の発言は、現場の隊員たちの苦労を何も理解していないものだ。

 安倍晋三首相は中国に対して毅然(きぜん)とした外交を貫いているが、安倍外交の足を引っ張るつもりなのか。首相経験者としては恥ずべき発言であり、首相の器ではなかったとしか言いようがない。

 英国のマーガレット・サッチャー首相(当時)は、1982年4月、南大西洋上の英領フォークランド諸島がアルゼンチン軍の侵攻を受けて占領されたとき、英国本土から1万3000㌔㍍も離れた同諸島に、2隻の空母を含む100隻の艦船、兵2万8000を送って同諸島を奪還した。サッチャー首相の行動は、リーダーのあるべき姿を示している。

 一国のリーダーとしては、村山・鳩山氏のようなタイプではなく、サッチャー首相のようなタイプが領土を守る上では、絶対に必要なのだ。

 領土を守ることは、リーダーにとって、命懸けの任務なのだから。

(濱口和久)