与野党決め手欠く衆院選で報道が結果左右すると指摘した三浦瑠麗氏

衆院選が公示され、第一声を上げる岸田文雄首相(自民党総裁)=19日午前、福島市

衆院選が公示され、第一声を上げる岸田文雄首相(自民党総裁)=19日午前、福島市

選挙低調で見解一致
 衆院選公示日(19日)夜放送のBSフジ「プライムニュース」。「与党にも野党にも追い風が吹いていない。菅政権が退陣し、岸田政権の誕生で、自民党に対する逆風はやんだ。その結果、自民党に追い風が吹いているかというとそうではない」と、今回の衆院選を「無風の中の選挙」と呼んだのはゲストコメンテーターの政治ジャーナリスト、田●史郎。

 また、元民主党幹事長で財務大臣を経験した政界のご意見番・藤井裕久が「大きく盛り上がらない気がする」と言えば、国際政治学者の三浦瑠麗も「(与野党が)決め手を欠く」と冷めた目で見た。コロナ対策や覇権主義を強める中国への対応など、内政・外交安全保障問題で重要課題が山積する中、「自公」か「野党連合」かの政権選択選挙、あるいは自公による「自由民主主義政権」か、共産党が参加する「共産主義政権」かの体制選択選挙という声さえある割には、選挙戦が低調というのが3人の共通認識だった。

 では、中盤から終盤戦を迎える選挙戦を左右するのは何か。三浦は「(決め手を欠くので)有権者が直前まで考える。だから、メディアがどう報道するかが影響する」と指摘した。

 マスコミ報道が一つのカギになるという見方は田●も同じで、「明後日(21日)あたりには、各社の世論調査結果が出る。その時、『与党過半数が確実』という見出しが躍ると思うが、その時、どうなるか」と、まだまだ判断の難しい情勢が続くとの見方を示した。

「勝ち馬」か「同情」か

 選挙になると、よく「アナウンスメント効果」が持ち出される。もともとは金融・経済用語だが、世論調査や当落予想についての報道が有権者の投票行動に影響を与えることを意味する。例えば、世論調査で優勢と出た政党や候補者には、勝ち馬に乗るがごとくに多くの票が集まることがある。これはアナウンスメント効果の一つで「バンドワゴン効果」と呼ばれる。逆に、調査で苦戦が伝えられると、同情票が集まることもある。この現象を「アンダードッグ効果」という。

 三浦は「野党連合の政権が成立するかもしれないとなると、(保守派が危機意識を持ち)自民党が有利になるだろうし、『自民党がぜんぜん大丈夫ですよ』となると、選挙に行かない人が増えますよ」と予測する。しかし、ことはそう簡単ではない。

 なぜなら、与党に勝利ムードが広がれば気が緩んで、支持者が投票に行かなくなることは容易に推測できるが、野党連合政権の成立可能性が高まれば、与党にアンダードッグ効果が起きる一方で、勝ち馬に乗ろうとし野党に投票する有権者が増える可能性もあるから、必ずしも自民党に有利となるとは限らない。つまり、アナウンスメント効果は、優勢側に起きるバンドワゴンと、劣勢側へのアンダードッグの両方を考慮する必要があるわけだ。日本人は判官びいきの傾向が強いと言われるが、実際はどうか。

 田●が指摘した21日の各紙に出た序盤の調査結果を見てみよう。左派の毎日は1面トップで「自民 議席減の公算大」、保守の産経は「自民 単独過半数の勢い」、読売は「自民減 単独過半数の攻防」と大見出しを打った。

 議席減が必至の自民の勝敗ラインについて、岸田文雄首相は「与党過半数(233議席)」に据えている。しかし、単独過半数を割り込めば、政権運営は厳しくなるから、自民が単独で過半数を確保できるかが勝敗の目安になるというのが大方の見方だ。

 そこで気になったのが投票率と毎日の見出し。大見出しは野党へのバンドワゴン効果を狙ったとも考えられるし、袖見出し「与党、過半数は確保」は、「大丈夫そうだ」と、与党支持者が気を緩めるのを狙ったのかもしれない。

安保が争点なら自民

 ただ、与党の過半数確保が確実との序盤の世論調査結果が出ても、田●が「その時、どうなるか」と濁したように、報道によるアナウンスメント効果で与野党どちらに風が向くのか、読むのが難しい選挙情勢の中で、「北朝鮮がミサイル発射したが、安全保障の論点が騒がしくなると、自民党に有利になる」とした三浦の指摘は間違いない。(敬称略)

(森田清策)

●=崎の大を立に