高市氏、旧皇族の復帰支持 河野氏は「女系」封印か
【皇位継承】
日本の皇室は、神武天皇から第126代の今上陛下に至るまで、例外なく男系で継承されてきた。時の権力者の交代があっても、日本国として統一と安定を保ってきたのは、この稀有(けう)な伝統による。
しかし現在、皇位継承資格を持つ男性皇族は、秋篠宮殿下、長男の悠仁殿下、上皇陛下の弟である常陸宮殿下の3方のみとなっている。
皇位継承についての政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)は7月に、これまでの議論の中間整理を発表した。そこで皇族の確保策として、①旧宮家の男系男子が現皇族と養子縁組し皇籍に復帰する②女性皇族が結婚後も皇籍を保持する――の2案に絞り答申をまとめるというものだ。
敗戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の主導で皇籍離脱を余儀なくされた旧宮家の男系男子を皇籍に復帰する案が、有望な選択肢として示されたことは画期的なことだ。
ただ、もう一つの選択肢として、女性皇族が結婚後も皇籍に留(とど)まる案が示され、女系天皇への余地を残した。
4候補の中で、旧宮家の男系男子の皇籍復帰にはっきりと賛意を表しているのは、高市早苗氏だ。所見発表演説会で高市氏は「126代続いた男系男子の血統、これはまさに天皇陛下の権威と正統性の源だ」と訴え、旧皇族の皇籍復帰を「希望する」と述べた。高市氏は、月刊誌「Hanada」11月号に寄せた手記でも、「先人たちが知恵を絞って男系の皇統を守り続けて下さったことを思うと、現代に生きる私たちにも叡智を結集して最善の道を選択する責務がある」と熱く語っている。
岸田文雄氏も女系反対・男系維持という立場でははっきりしている。所見発表で「旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案を含め、女系天皇以外の方法を検討すべきだ」と述べている。
一方、かつて女系天皇を容認する発言をしてきた河野太郎氏の皇位継承に関する発言は大きくぶれている。
昨年8月に配信した動画で、「旧宮家を戻すという議論をする人たちがいるが、戦後まで残った宮家は600年前に天皇家から分かれた人たちだ」とし、「600年間男系が続いている保証はない」と決め付け、「愛子様をはじめ内親王のお子様を素直に次の天皇として受け入れることもあるのではないか」と述べている。
有識者会議が中間報告で基本的方針として、「今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」とした立場から程遠い見解だ。
こういう発言では保守層が離れると思ったのか、所見表明で河野氏は「126代続いている日本の伝統を次の世代に受け継いでいくというのが非常に重要だ」と、一転して伝統尊重姿勢を強調。その上で政府有識者会議の結論を尊重する考えを示したが、女系天皇の賛否については明言を避けた。いったん封印しただけの可能性もある。
野田聖子氏は共同記者会見で「一つの選択肢として女系天皇は含まれる」と明言。その理由として「男系男子を続けていくには難しい状況に今なっている」との認識を示した。
4候補の皇位継承についての考え方や重要性への認識にはかなりの開きがある。誰が総裁となるかは、皇室ひいては日本の将来を大きく左右することになる。
(特別編集委員・藤橋 進)






