外交頼みの河野氏に懸念 台湾と連携重視の高市氏
【対中・安保政策】
日本をとりまく安全保障環境は緊張を高めている。沖縄県・尖閣諸島沖では今年2月に「武器の使用」が認められた中国海警局の公船が恒常的に接続水域にとどまり、領海侵入を繰り返しており、北朝鮮のミサイルの脅威も増している。日本の安保に直結する台湾有事も切迫している。
尖閣問題に最初に言及したのは高市早苗氏で、8日の出馬会見で「海警法に対応できるよう、海上保安庁法の改正を進めていく」と主張。岸田文雄氏がこれに続き、13日の記者会見で「海上保安庁の能力強化、自衛隊との連携強化など、法改正も視野に入れつつ、全力で取り組む」と発表した。
当初、法改正には言及していなかった河野太郎氏は24日、遅ればせながら「必要なら海上保安庁に関する法律の改正も視野に入れ、何かあった時は自衛隊が対応できる体制を維持していきたい」と発言した。
河野氏は中国の人権問題に関する国会の非難決議を採択すべきかどうかを問う民間団体のアンケートに対しても、当初は回答せず、1日遅れで「時期はわからないが、採択すべき」と回答した。実弟の企業が中国企業と深いかかわりを持っていることが指摘されており、対中政策への影響が懸念される。
尖閣や台湾有事は、武力攻撃とはっきり断定できない「グレーゾーン事態」になると予想されている。これについて、各候補は法改正で対応するとしているが、現行の憲法下で本当に有効な法改正が可能なのか。憲法改正にまで踏み込んだ議論をしているのが高市氏だけなのは寂しい限りだ。
北朝鮮のミサイル攻撃を想定した敵基地攻撃能力についても賛否が二分している。高市氏は「やられてもやり返さないということではどうしようもない」と主張。岸田氏も「有力な選択肢」だとし、共に保有に意欲を示している。
これに対し、河野氏は「昔の議論だ」「かえって不安定化させる要因だ」と消極的。「抑止力をどう高めていくかの議論をしなければならない」とし、北朝鮮に関する情報収集能力の向上を訴えた。
野田聖子氏は「最高の安全保障は優れた外交だ。軍備の話から始める抑止力は考えられない」と主張し、河野氏同様「日本には情報収集能力がないことが一番の問題だ」と指摘している。
中国との向き合い方について、河野氏は人的交流や首脳会談などを通した「したたかな外交を繰り広げる」としている。先月発売の著書『日本を前に進める』で、「中国の軍事活動に対抗するための枠組みをアジアで作り上げることを検討する必要がある」と述べている。あくまでも外交力で対応するとの姿勢だが、経済力・軍事力の裏付けがない外交が通用するほど、国際社会は甘くない。
河野氏と同じく、外相経験者の岸田氏は「価値を共有する国・地域としっかり連携し、しっかりものを言う」と述べ、同盟関係の連携強化を訴えている。また中国政府による少数民族への人権弾圧については、「人権問題を担当する総理大臣補佐官を設置する」と強気な発言をしている。
高市氏は、機微技術や戦略物資などの流出を阻止する「経済安全保障包括法」の制定に意欲を示し、20日には台湾の蔡英文総統とオンラインで会談し、台湾のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)加盟支援を表明するなど、台湾との強い連携をアピールしている。中国や北朝鮮による安保危機への対応は一刻の猶予も許されない。準備が必要だ。(川瀬裕也)






