共産党と全体主義、なぜ政権取れば人権無視か

《 記 者 の 視 点 》

日本共産党 本部(Wikipediaより)

日本共産党 本部(Wikipediaより)

 国民民主党の玉木雄一郎代表が18日の記者会見で、同党と連合が締結した政策協定の「左右の全体主義を排し」との文言について「共産主義、共産党のことと認識している」と述べたことと関連し、共産党の志位和夫委員長に釈明したことを明らかにした。

 共産党は玉木発言が党創立99周年の7月15日に飛び出したこともあってか、小池晃書記局長らが発言の撤回を求める一方で、次期衆院選で国民現職(比例選出)が出馬する茨城5区に「対抗措置」として新人候補を擁立するなど、さまざまな圧迫を加えていた。

 玉木氏は会見で、次期衆院選は「安倍晋三政権から9年間の政治の在り方を問う選挙となる」と述べ、共産党との関係について「今の政治を変えていかなければならない、変えるのであれば野党の候補者を絞り込んでいかなければいけない、そこは一体感をもっていかなければいけない」と表明。

 その上で、「共産主義、共産党は、ソビエト共産主義が典型的だが、全体主義と非常に親和性があったことは歴史的事実で、そういう勢力とは一緒にできないという趣旨で申し上げた」と述べつつも、「日本共産党は歴史的な共産党ではない」という志位委員長の説明を「私としてはテークノートする(留意・参考にする)」として、「歴史的にあった共産党と(日本共産党を)同一視したことについては改めたい」と述べたという。志位氏はこれを受け、19日の記者会見で「事実上の撤回と受け止めた」と述べた。

 玉木氏の今回の発言は、当落線上で苦闘する次期衆院選立候補者のことを考えた苦渋の発言なのか、いったん志位氏の説明を「留意」することで今後の共産党の動きに釘(くぎ)を刺そうとしたのか、その真意は定かではないが、共産党は全体主義であるとの言が後退したことは、残念だ。

 また、共産党の相次ぐ撤回要求に対し、連合の考え方を代弁した色彩が濃い玉木氏を連合も党も守れなかったこと。つまり、共産党への理論的、実証的な対抗策を十分準備できなかったことは、組織的にあまりにもふがいないと言えよう。

 紙面の都合で、共産党と全体主義の問題について詳しくは書けないが、彼らがいまだに、資本主義の「必然的没落」と「その先の社会―社会主義・共産主義の社会」を目指すと公言(志位委員長)し、その世界は「つぶれてしまった旧ソ連や、現在の中国のような、自由も人権も民主主義もない社会、他国への覇権をふるう体制ではありません。民主主義のもとで…かちとった、自由と民主主義の制度、生活と権利を守るルール、人間の豊かな個性など、価値ある成果をすべて引き継ぎ、…花開かせる社会」(同)だと主張しているので、一つだけ尋ねたい。

 なぜ共産党が政権を取れば個人の自由を全体(共産党)のために犠牲にする、人権無視の統治を行うようになるのか。ソ連や中国の指導者の共産主義理解が間違って(劣って)いたのか、あるいは、共産主義の哲学・思想そのものに人権尊重の根拠がないのか。

 もし前者なら、日本共産党の共産主義理解が他国のどの共産党より優れていることになるが、もし後者なら、彼らの主張は政権を取るための無責任で有害なプロパガンダにすぎないことになる。これは重大な問題だ。

政治部長 武田 滋樹