米の生物兵器使用説を拡散、中国 朝鮮戦争ドラマで偽情報
中国国営テレビは昨年末から、米軍が朝鮮戦争中に中国に対し生物兵器を使用したという偽情報を、再び放送を通じて拡散させている。新型コロナウイルスの発生源として中国を非難する米政府を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる一方で、中国共産党設立100周年を前に、愛国心を高めるためのプロパガンダの一環とされている。
中国国営中央テレビ(CCTV)は昨年12月に40回の歴史ドラマシリーズ「鴨緑江を渡る」の放送を開始した。朝鮮戦争での中国兵を描いたものだ。
その第35回は、米国の航空機が爆発しない爆弾を投下するコンピューターグラフィックスの映像で始まり、劇中、その爆弾に収納されていた生物兵器に兵士が感染し、少なくとも1人が死亡する。
デマが70年たって再び復活した格好だが、一方で中国は、新型コロナ発生源として世界から批判を受けている。新型コロナは中国軍の生物兵器研究に関わっていたとみられている「武漢ウイルス研究所」から流出したとの指摘も専門家の間で出ている。
生物兵器使用の中国の主張は、米政府、民間研究機関による報告で否定されており、最近では、ソ連当時の文書で偽情報であったことが明らかになっている。
このドラマは、中国共産党の放送許可を受け、中国東北部の天津では市当局が「愛国心」を高めるための取り組みの一環として全党員に視聴を命じている。
米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)が明らかにした天津共産党の文書によると、すべての地方党委員会、市政府、非政府機関が、全シリーズの視聴を命じられた。
RFAによると、中国共産党機関紙・人民日報が、このドラマは反米プロパガンダ強化の一環であり、7月の中国共産党設立100周年に合わせたものだと指摘している。党の宣伝機関は6月から、共産党支配の歴史を称(たた)えるキャンペーンを開始するという。
中国の人権活動家、王愛忠氏はRFAで、同様の指示が数年前に出され、「党員、党幹部、大衆は、党の歴史と、党の思想を推奨する文学作品を学習するよう求められている」という。