ブラジルの世界自然遺産のパンタナールで深刻な森林火災
貴重な生態系に影響も
ブラジル西部にある世界最大級の熱帯性湿地帯で世界自然遺産に指定されているパンタナールで、「過去に類を見ない」(現地政府)規模の森林火災が発生し、貴重な生態系にも影響が出かねない状態となっている。
パンタナールは、マトグロソドスル州とマトグロソ州、一部はパラグアイとボリビアにも及ぶ。世界的にも貴重で、豊富な動植物相を持つことで知られており、ブラジル側のパンタナールは、エコツーリズムを通じて世界各国から多くの観光客が訪れている。
パンタナールの森林火災は、アマゾンの深刻な森林火災が問題となった今年9月にも発生していた。マトグロソドスル州内のパンタナールで10月25日に始まった森林火災は、乾期の乾燥と強い風の影響を受けて急速に拡大、これまでに、東京ドーム1万個分に相当する5万ヘクタールを焼き尽くした。パンタナールでは、今年に入ってから8000件の森林火災が発生しており、昨年比で460%増を記録、関係者は「史上最悪」と憂慮している。。
マトグロソドスル州では、「危機的な状況」(州政府)として近隣都市と地域に緊急事態を宣言、30日間の野焼きを禁止した上で、消防飛行機なども投入して鎮火に当たっているが、火勢が強く対応に限界があるのが現状だという。
パンタナールは、「動植物の楽園」と言われるほど、豊かな動植物相を抱えており、生息する動物には絶滅危惧種で「青い宝石」とも言われるスミレコンゴウインコやオオアリクイなども含まれる。すでに、森林火災によって焼死する動物が出始めており、火災がさらに続けば、生態系に深刻な影響を及ぼしかねない。
(サンパウロ 綾村悟)