米下院でシリア撤収に反対決議


共和党議員も多数賛成

 米議会下院は16日、シリア北部からの米軍撤収に反対する決議案を354対60の賛成多数で可決した。民主党議員の全員に加え、共和党議員の129人が賛成に回るなど幅広い支持を集めた。過激派組織「イスラム国」(IS)が再び台頭することや同盟・友好国からの信頼を失うことへの懸念などが背景にある。

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16日、米ホワイトハウスでシリア情勢についてトランプ大統領との会談後、報道陣に応じるペロシ下院議長ら(UPI)

 決議はクルド人勢力に対する支援を継続するよう訴えるとともに、ISの台頭を抑止するための具体的な計画も提示すべきだとした。トルコのエルドアン大統領にシリアへの侵攻を中止するように要求している。

 トルコ軍の侵攻により、IS掃討作戦で協力してきたクルド人勢力が戦闘に巻き込まれることで、ISが再び台頭することが懸念されている。また、シリア撤収を決めたことで、協力関係にあったクルド人勢力を見捨てることになるとの批判も高まっている。

 米メディアによると、民主党は共和党上院トップのマコネル院内総務に決議案の採決を要求。シリア撤収については、共和党上院議員からの反発も強く、採決されれば可決される公算が高い。

 マコネル氏は16日の会見で、シリア撤収について「我々の多くは間違いだと主張してきた。進路を元に戻すことを望んでいる」と表明。「(トルコによる)攻撃を早期に止める必要がある」として、上院でトルコに制裁を科す法案を検討すると述べた。

 一方、トランプ大統領は16日、ホワイトハウスでトルコによるシリア侵攻について「私はトルコに許可を与えてはいない」として批判に反論。またトルコとクルド人勢力との問題であるとの立場から「私には関係ない」とも述べ、米軍撤収を続ける考えを示した。米軍撤退後にロシアなどが影響力を強めるとの懸念についても「ロシアがシリアと関わりたいなら、それは彼ら次第だ」と述べた。

(ワシントン 山崎洋介)