ブラジル大統領、環境軽視の姿勢は容認できぬ
世界の原生林の3分の1を占め「地球の肺」と称されるアマゾン熱帯雨林が、続発する火災で過去最悪とも言われる危機にさらされている。
背景には、ブラジルのボルソナロ大統領の開発重視・環境軽視の姿勢がある。
アマゾン森林で火災続発
地球最大の熱帯雨林を抱えるアマゾン盆地は、大気中の酸素の20%を供給すると言われ、その重要性から「地球の肺」とも呼ばれる。
地域一帯だけでなく、世界の気候をも左右する役割を担っている。500万平方㌔に及ぶアマゾン熱帯雨林には、膨大な量の炭素が蓄えられており、それは人類が毎年大気に排出する炭素量の約10倍に等しい。アマゾンの森林が燃えれば、大量の二酸化炭素(CO2)が放出され、地球温暖化などが深刻化することが懸念される。
地元の環境NGOなどによると、今年1月から8月半ばまでのアマゾンの火災は、過去3年平均の6割増の3万2728件に上る。折からの異常乾燥の中、牧草地などを開くために野焼きが頻繁に行われたことが原因の一つと考えられている。
火災をめぐっては、地球温暖化に懐疑的な見方を示し、環境保護よりも開発を重視するボルソナロ氏の姿勢が今年の野焼きの増加を招いたとの批判が国内外で上がっている。ボルソナロ氏は1月の就任後、環境保護団体への補助金を削減し、自然環境や先住民のために保護されていたアマゾンで農畜産業拡大や鉱山開発を進める方針を示していた。
国際社会がボルソナロ氏を厳しく非難するのは、アマゾン熱帯雨林の火災が地球規模の環境問題であるためだ。ところが、ボルソナロ氏は国際協調を乱す言動が目立つ。
フランスのマクロン大統領は8月、先進7カ国(G7)がブラジルに対し、鎮火のために2000万㌦(約21億円)の緊急支援を行うと表明。だが、かねてボルソナロ氏の環境軽視の姿勢を批判してきたマクロン氏の申し出に対し、ボルソナロ氏はツイッターで「助けるという大義名分をかざし、アマゾンを植民地や所有者のいない土地のように奪おうとたくらんでいる」などと非難した。感情的な対応は問題解決を遠のかせることにもなりかねない。自制する必要がある。
ブラジルは南部に産業が集中し、森林が広がる北部は貧しい。北部9州の平均月収は1810レアル(約4万6000円)で、最大都市サンパウロの6割強にすぎない。ボルソナロ氏は歴代左派政権のような分配ではなく、経済振興による格差是正を打ち出し、それが開発重視の姿勢につながっている。
だが、開発を進めるために環境破壊を容認することがあってはなるまい。アマゾン熱帯雨林は生物多様性の宝庫でもあり、医薬に用いられている数百種の植物が生育している。地球全体の財産だとも言える。
日本も積極的に支援を
ボルソナロ氏は国際社会とも連携して問題解決に取り組むべきだ。
日本も積極的に支援する必要がある。