ブラジルのアマゾンなど森林火災増加


黒煙、サンパウロ市にも

 世界最大の熱帯雨林で「地球の肺」とも呼ばれるブラジルのアマゾン熱帯雨林と、パラグアイとブラジル、ボリビアにまたがるパンタナール地方の森林火災が深刻だ。19日午後には、パンタナールから1500キロ近く離れたサンパウロ市にまで火災で発生した黒煙が到達し、短時間だが街全体が暗闇に包まれた。

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森林火災の黒煙に包まれた19日午後3時のサンパウロを報じるブラジル・フォーリャ紙(同紙電子版より)

 ブラジルのSNSでは、サンパウロ市が黒煙に包まれる様子が写真と共に広がり、「アマゾン熱帯雨林の火災が2700キロ離れたサンパウロにまで届いた」との臆測まで出た。ただし、気象学の専門家は20日、サンパウロ市の黒煙はパンタナール地方(特にパラグアイとボリビア)での森林火災が原因だと発表した。

 ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、ブラジルの熱帯雨林では、例年を大きく上回る7万2000件もの森林火災が発生、INPEが森林火災の観測を始めた2013年以降で最大の数値となった。特に8月の発生件数は3万2000件と飛び抜けており、昨年を260%余り上回る増加率だ。これまでの最高は16年の6万6000件だった。

 また、ブラジル側のパンタナールがあるマットグロッソ州では、今年に入ってから1万3000件以上の森林火災が観測されている。この数字は、昨年を88%上回っており、森林火災がブラジル全体に広まっていることを示唆している。

 森林火災による黒煙はブラジルの北部州に大きな影響を与えており、アマゾナス州では非常事態宣言が発令された。ブラジルでは、「焼き畑農業」と呼ばれる農地開発が頻繁に行われており、森に人為的に火を付けて焼くことで放牧地や農地などが作られている。焼き畑は特に、7~9月の乾季に行われることが多く、この時期にアマゾンやパンタナール地方を訪問すると森林近くの空が煙で覆われていることは少なくない。ただし、黒煙がサンパウロ市まで届くことはこれまでにはなかったことだ。

(サンパウロ 綾村悟)