米大統領、イラン攻撃を直前に中止


無人機撃墜の報復「相応でない」

米軍の無人偵察機がイランに撃墜された問題で、トランプ米大統領は21日朝、ツイッターで、米軍が前日夜にイランへの軍事攻撃の準備を進めていたが、開始10分前に中止させたと発表した。軍事攻撃により150人が犠牲になると聞かされたとし、「無人機に対する報復としては相応ではない」と中止の理由を述べた。

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トランプ米大統領(左)とポンペオ国務長官(中央)、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)=20日、ワシントン(AFP時事)

 ニューヨーク・タイムズ紙などは20日、トランプ氏はイランの軍事施設への攻撃をいったん許可したが、その後、撤回したと報じていた。同紙によると、米政権は、レーダーシステムやミサイル施設を標的とした限定的な攻撃を計画し、すでに準備が進められていた。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)やポンぺオ国務長官、米中央情報局(CIA)のハスペル長官が攻撃に賛成したが、国防総省高官は、中東地域の米軍を危険にさらすとの懸念を示したという。

 トランプ氏は20日、イランが無人機を撃墜したことについてホワイトハウスで「我々は我慢しないだろう」と述べ、対抗措置を取る可能性を示唆。一方、「無謀で愚かな誰かが行った可能性もある。(イランの指導部が)意図的に行ったとは信じがたい」と述べており、大規模な軍事衝突は回避したい意向もにじませていた。

 トランプ氏はまた、米兵に死傷者が出ていないと指摘し、「これはとても重要なことだ」と強調した。ワシントン・ポスト(WP)紙によると、ポンぺオ国務長官は先月、イランや同国が支援する勢力により米兵が1人でも死亡すれば、軍事的な反撃を行うと警告していた。

 トランプ氏はこれまで、泥沼化したイラク戦争を「避けられた大失態」と批判し、米軍の海外活動を縮小する方針を示してきた。イランとの戦争についても、望まないとの意向を繰り返し表明してきた。

 ホワイトハウスは20日、議会の指導部を招いてイラン情勢について説明した。共和党上院トップのマコネル院内総務は、協議後に記者団に「政権は熟慮した上での対応をしている」と指摘。民主党上院トップのシューマー院内総務は「大統領は戦争をするつもりはないかもしれないが、戦争に陥る可能性を懸念している」と述べた。

 一方、次期国防長官に指名していたシャナハン国防長官代行が18日に指名を辞退し、長官ポストの空席が続く中、ボルトン氏ら対イラン強硬派が勢いづいているとも指摘される。