新米国務次官補、中朝への対処で政権支えよ


 米政府の重要ポストである東アジア・太平洋担当の国務次官補に、デービッド・スティルウェル退役空軍准将の起用が決まった。

 中国の海洋進出強化、北朝鮮の核・ミサイル開発の継続などで緊張が高まる中、東アジア政策に関する事務レベルの最高責任者である国務次官補の立場は重要だ。

空席が長く続いたポスト

 このポストは、トランプ政権発足後の2017年3月にダニエル・ラッセル氏が退任して以降、空席が続いていた。トランプ政権では高官人事の停滞が目立つが、東アジア・太平洋担当の国務次官補がこれだけ長期間空席であったのは極めて異例。これを契機に、トランプ政権の東アジア政策がより適切な形で進むことが期待される。

 スティルウェル氏は、米軍三沢基地(青森県)で司令官として勤務した経験がある。韓国語や中国語が堪能で東アジアの情勢に精通している。中朝の脅威への対処に向け、政権を支える必要がある。

 今年3月に開かれた米上院外交委員会の承認公聴会で、スティルウェル氏は「北朝鮮に対する圧力は変わらずに継続する」ことを明確にした。北朝鮮の非核化は一向に進んでいない。いかなる制裁も解除してならないのは当然だ。

 さらに「日本、韓国、オーストラリアそれにフィリピンとの強固な同盟をさらに強化していく」姿勢を強調した。特に北朝鮮に対処するには、日米韓の連携が欠かせない。

 もっとも、韓国の文在寅政権は北朝鮮寄りの言動が目立つ一方、対日関係を悪化させるなど日米韓の結束を乱している。これでは北朝鮮の非核化は遠のくばかりだ。

 トランプ氏は6月末に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議への出席に合わせて韓国も訪問する。日米韓の協力強化で文大統領と一致できるかが焦点の一つとなろう。

 スティルウェル氏は中国について「『一帯一路』(シルクロード経済圏構想)や南シナ海の軍事拠点化などさまざまな手段で、他国の主権を損なっている」と非難した。

 中国は東シナ海においても、沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、中国公船が尖閣周辺で領海侵入を繰り返している。このほか、4月から6月にかけては領海外側の接続水域で64日連続航行するなどの動きを見せた。

 台湾に対する強硬姿勢も懸念される。中国の習近平国家主席は「一国二制度」による中台統一を目指し、武力行使も排除しない方針を示している。中国の無法な振る舞いは決して容認できない。

覇権拡大抑える政策を

 当初ラッセル氏の後任には、国務次官補代行を務めてきたスーザン・ソーントン氏が指名されたが、政権内部で「中国に対する姿勢が弱腰だ」とする見方が強いため、承認手続きが進まず、昨年7月末に退任した。

 スティルウェル氏は中国との競争を戦略的にとらえる対中強硬論者だ。中国の覇権主義的な動きを抑え込む政策を立案する必要がある。