米ロシア疑惑 トランプ氏の訴追「選択肢でなかった」


特別検察官が退任表明

 ロシア疑惑の捜査を担当したモラー特別検察官は29日、米司法省で声明を読み上げ、「大統領を訴追することは、我々が検討しうる選択肢になかった」と述べた。現職大統領を起訴しないとの同省の指針により、トランプ氏が司法妨害をした疑惑について判断を見送ったとした。これを受け、野党・民主党は疑惑追及の動きを強める姿勢だ。

モラー特別検察官

モラー特別検察官(EPA時事)

 モラー氏が疑惑捜査について公の場で発言するのは2年前の就任以降初めて。4月に公表された捜査報告書では、トランプ氏による司法妨害の疑いがある事例を示した上で、「起訴判断を行うのは困難」としていた。モラー氏は今回の声明で、「トランプ氏が明確に罪を犯していないとの確信があれば、我々はそう述べただろう」と述べ、完全に潔白ではないとの認識を示した。

 モラー氏はまた「報告書そのものがすべてを物語っている」と述べ、民主党が求める議会証言には応じない考えを示した。近く特別検察官の職務から正式に退き、捜査チームも解散するという。下院司法員会のナドラー委員長(民主党)は声明で、「モラー氏が大統領に対する刑事訴追を行うことができなかったことを考えると、トランプ大統領の犯罪やうそ、他の不正に対応するのは議会の仕事だ」と述べ、追及を強める考えを示した。

 一方、トランプ氏は、モラー氏による声明の直後、ツイッターで「捜査報告書の内容から何も変わっていない。証拠不十分であれば、我が国では潔白だ。この件は終わりだ」と述べ、無実であると改めて主張した。

(ワシントン 山崎洋介)