クーデター不発か ベネズエラ
大統領側は鎮圧宣言
反米左派マドゥロ大統領による強権政治が続く南米ベネズエラで先月30日、野党指導者グアイド国会議長が、同じ野党指導者のレオポルド・ロペス氏やマドゥロ政権打倒に同調する軍人らと共に、事実上のクーデターを起こした。グアイド氏は、首都カラカスの空軍基地内に入って国軍の離反を促したが、大部分の国軍幹部や軍人は同調せず、現時点ではクーデターは不発に終わる可能性が高くなっている。
グアイド氏は大規模デモ呼び掛け
グアイド氏が隆起を発表したのは30日の早朝、「マドゥロ政権打倒は最終段階に入った」と宣言した同氏の呼び掛けに応じ、カラカス市内では数万人規模の市民が市街に繰り出して反政府デモを繰り広げた。
一方、治安部隊は装甲車や治安維持用の兵器(ゴム弾)などを用いて応酬した。現地からの報道では、装甲車がデモ隊の群衆に突入して轢いて回る様子も伝わっており、マドゥロ政権側の強硬姿勢も目立っている。デモ参加者を中心に少なくとも71人の負傷者が出ているという。
グアイド氏は、「デモは必ず(政権打倒に)結び付く」と主張、1日に最大規模の反政府デモを呼び掛けて政権打倒への気勢を上げている。ただし、情勢は反大統領側にとって不利だ。グアイド氏と共に隆起を呼びかけたロペス氏は同日、チリ大使館に保護を求め、その後はスペイン大使館に移動した。反政府側の軍人も、一部がブラジル大使館に保護を求めているという。
こうした中、マドゥロ氏は30日午後、テレビ演説で「反乱首謀者による小競り合いだった」「少数の反乱軍人を鎮圧した」と説明、「勝利宣言」を行った。また、隆起に加わった兵士らには刑事訴追を行うと言明、軍の引き締めを図る意向を示した。国軍は、マドゥロ氏の権力基盤でもある。
1日にグアイド氏が予定する反政府デモだが、国軍の離反が限定的に終わっている中で、政権打倒に結びつく可能性は低いと見られている。ただし、治安部隊による強硬的なデモ鎮圧などで一般市民に多数の死傷者が出た場合、国際的な批判や世論の反発につながりかねず、しばらくは流動的な状態が続きそうだ。
(サンパウロ 綾村悟)