米大統領選、高まるサンダース氏への警戒感

 2020年米大統領選の民主党候補指名争いに立候補している自称「民主社会主義者」のバーニー・サンダース上院議員(77)に対する警戒感が共和党や民主党主流派の間で高まっている。今月中旬に放送された同氏の対話集会は、次期大統領選をめぐる同様の集会で最大の視聴者数となるなど注目を集めた。過去の選挙戦の教訓を踏まえ、今回は社会主義的な政策が持つ極端さを和らげているとも指摘される。
(ワシントン・山崎洋介)

社会主義的主張を軟化か
民主党主流派も懸念強める

 「今回こそはサンダース氏が勝利するかもしれない」。ブッシュ(子)元大統領の選挙参謀だったカール・ローブ氏は、17日にウォール・ストリート・ジャーナル紙にこう見出しが付いた寄稿を発表し、注意を喚起した。

バーニー・サンダース米上院議員

今年3月、カルフォルニア州サンフランシスコの集会で演説するバーニー・サンダース米上院議員(UPI)

 ローブ氏がこのように判断したのは、保守系ケーブルテレビ局FOXニュースが主催する15日の対話集会に出演したサンダース氏の言動を見てのことだ。

 トランプ大統領寄りの同テレビ局が主催する集会に「敵地」に乗り込むような形でサンダース氏が出演したことで注目を集めた。調査会社ニールセンによると、視聴者数は250万人以上で、次期大統領選に向けた候補者の対話集会としてはこれまでで最高だった。

 会場は、前回大統領選でトランプ氏支持に回った白人労働者層が多く住む「ラストベルト」の一角、ペンシルベニア州のベスレヘム。そこでサンダース氏は、厳しい質問をも難なく切り返し、巧みな受け答えぶりを印象付けた。

 最近公表した納税記録で本の印税などで同氏が年間100万㌦以上稼いでいたことが分かったことをめぐり、司会者が「なぜ、反対していた『トランプ減税』に基づいて税金を支払ったのか」と質問。これにサンダース氏は「私は払うべき税を支払っている」と短く答えた後にすぐに話をすり替え、聴衆に向かってトランプ氏も納税記録を公開すべきだと訴え、喝采を浴びた。

 ローブ氏は、サンダース氏について、「16年の選挙戦は、彼に社会主義的な主張の極端さを和らげることを教えたようだ」と分析。サンダース氏の話しぶりが流れるような柔軟性を増した上に、民主社会主義について「すべての人のための政府、経済、社会を築くことだ」などと前向きなイメージを前面に出したと指摘した。

 もっとも、サンダース氏は自身の主張する社会保障政策に必要な巨額の財源を明確にしないなど、今後追及を受けることが予想される弱点は多くあるが、共和党員たちが思うほど容易な相手にはならないだろうという。

 今回は、民主党内でサンダース氏に近いアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員ら若手勢力も台頭。選挙資金面でも、サンダース氏は今年1~3月の期間で、民主党候補の中で最高額を集めた。その上、民主党候補が乱立する状況で票が分散されれば、強固な支持基盤を持つ同氏が有利になることも考えられる。

 こうしたサンダース氏の勢いに、かつてヒラリー・クリントン氏を支持していた民主党主流派が懸念を強めている。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、長く民主党を支援してきた会社経営者のバーナード・シュワルツ氏が主催する夕食会に、民主党のペロシ下院議長やシューマー上院院内総務ら中道左派や穏健派の議員が多く参加。そこでは「サンダース氏をいかに止めるか」が話し合われたという。前回大統領選でアウトサイダーだったトランプ氏が共和党のエスタブリッシュメントを圧倒したようなことが、今度は民主党で起きると警戒されているというのだ。

 一方のサンダース氏側も、主流派からの攻撃には対抗する姿勢だ。クリントン氏に近いリベラル系シンクタンク「アメリカ進歩センター(CPA)」の関連団体は、「バーニーのミリオネア問題」と題する動画を最近公開。サンダース氏の資産が増加するとともに、富豪を批判する口調がどう変化したかを示す内容だが、これに同氏は「非生産的なネガティブキャンペーンはやめるべきだ」と主張する書簡を送り、こうした動きを牽制(けんせい)した。