国連、マドゥロ政権の人権侵害批判
ベネズエラ情勢で報告書
政情不安が続いている南米ベネズエラ情勢に関して、国連人権高等弁務官事務所は20日、反米左派マドゥロ政権が秘密警察や民兵などを用いて反体制派の市民に対する殺害や拷問、拉致などの弾圧を行っていると指摘する報告書を発表した。
一方、バチャレ弁務官は、米国による制裁が、経済危機をさらに悪化させているだけでなく、食料不足や医療崩壊など基本的権利を損なう原因になり得ると牽制(けんせい)した。
同報告書は、弁務官事務所の職員が実際にベネズエラ国内で調査した情報によりまとめられた。報告書によると、反政府デモに対する弾圧を含めて、昨年1年で少なくとも205人の市民が当局や民兵によって殺害された。人権侵害は今年に入ってからさらに悪化しており、1月の1カ月間だけで37人が反政府活動を理由として殺害されているという。
また、子供たちの権利も制限されており、教員不在や給食の欠乏、通学手段の欠如などで100万人を超える子供たちが通学できない状況にあるという。米国の制裁が続くことにより、こうした状況が悪化する可能性も指摘されている。ただし、マドゥロ政権も米国やブラジルからの人道支援物資(食料や医薬品)を、「人道危機は存在しない」「支援を隠れ蓑(みの)にした侵略だ」などと拒否し続けている。
ベネズエラでは、マドゥロ大統領と野党指導者グアイド国会議長の間で権力争いが続いている。米国や欧州など世界50カ国は暫定大統領就任を宣言したグアイド氏を正統なベネズエラの指導者として支持、中露やキューバなどはマドゥロ氏を支持しており、国際社会も両氏の支持をめぐって二分されている。この状況を受けて、弁務官事務所は「人権侵害や経済崩壊などベネズエラが抱えている深刻な状況は、南米の周辺地域をも不安定にさせかねない」と懸念を示している。
(サンパウロ 綾村悟)