EU大統領、離脱延期が短期間なら可能
協定案の英議会承認が条件
英国のメイ首相が欧州連合(EU)離脱期限の29日が迫る中、EUに対して6月末までの延期を求めたのを受け、ブリュッセルからの報道によると、トゥスクEU大統領は20日、「短期間の延期は可能」としながらも、英下院が離脱協定案を承認することが条件だと厳しい条件をつけた。
EUは首脳会議を開催し、離脱延期の可否を議論しているが、最終決定は来週に持ち越される公算が高い。一方、英国側は今週、バーコウ下院議長が、協定に変更点がない限り同じ内容について3度目の採決は認められないと発言し、協定案の下院承認はさらに不透明さを増している。
トゥスク氏は6月末までの延期は「法的、政治的な問題をもたらす」との認識を示し、5月23日に欧州議会選を控えており、延期した場合の英国の法的問題をクリアする必要がある。EUが延期を受入れるには英国を除く27加盟国の合意が必要だが、離脱交渉のEU側トップのバルニエ主席交渉官も「延期には明確な理由と目的が必要」と述べている。
トゥスク氏としては、英国側は下院で協定案が可決されれば、延期の最終決定に必要な書面上の手続きを迅速に行えるとしている。が、下院で採決されないか否決された場合の事態に備え、期日の言及はしていないものの、欧州首脳会議を緊急招集する意向も示している。
ただ、現実には協定案をあくまで最終案として大きな修正に応じない構えのEUに対して、メイ政権は修正協議で与党内でも足踏み状態だ。また、大きな修正のない協定案を再度採決しないと下院議長が述べていることから、29日まであと1週間に迫る中、予断を許さない状況が続いている。
(パリ 安倍雅信)