ベネズエラの国会議長が暫定大統領に


マドゥロ政権は米と断交

 反米左派のマドゥロ大統領による強権政治が続いている南米ベネズエラで23日、野党指導者のフアン・グアイド国会議長(35)が暫定大統領就任を宣言した。支援者が集まった首都カラカスの集会で行ったもので、グアイド氏は「憲法規定により、国会議長から暫定大統領に就任する」と述べ、早急に新大統領を決める選挙を実施すると国民に向けて約束した。

グアイド国会議長

3日、カラカスで行われた反政府集会で演説するベネズエラのグアイド国会議長(AFP時事)

 同日は、野党側の呼び掛けによりベネズエラ各地で大規模な反政府デモが発生した。複数のメディアの報道では、少なくともデモ参加者の1人が死亡した。

 グアイド氏の宣言を受けて、米国、カナダ、ブラジルなど米州の主要各国の首脳、さらに米州機構(OAS)のアルマグロ事務総長らは、相次いで暫定大統領を承認する声明を出した。

 ベネズエラの国会は、野党側が過半数を握っているが、大統領派が多数を占める最高裁によって権限の多くが剥奪されており、実質的な機能を果たしていない。そのため、グアイド氏の暫定大統領就任に関しては、各国の承認や支援が欠かせない。

 ブラジルではボルソナロ政権がグアイド氏の暫定大統領就任を承認すると同時に、「ベネズエラが民主政治へと移行できるように外交・経済両面でのいかなる支援も欠かさない用意がある」(ボルソナロ氏)との声明を発表している。また、コロンビアやアルゼンチン、パラグアイなど米州の各保守政権も、暫定大統領の就任を承認すると同時に、大統領選挙のやり直しを求めている。

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 一方、トランプ米大統領は、「(ベネズエラ政府の対応次第では)あらゆる選択肢を検討している」との強硬姿勢を表明、マドゥロ政権が野党や反大統領派の弾圧を行わないように声明で牽制(けんせい)した。

 こうした中、マドゥロ大統領は同日、テレビ演説で米国との国交断絶を発表、米大使館員らに対して72時間以内に出国するように命令した。キューバやボリビア、メキシコなど米州の左派政権もグアイド氏の暫定大統領就任を認めない方針を示した。

 ベネズエラでは、10日にマドゥロ大統領が2期目の就任式を行ったばかり。ただし、昨年5月に実施された大統領選挙では、当初の予定が政権主導で大幅に早められただけでなく、主要野党指導者が立候補を禁止される事態となり、反発する野党側は大統領選挙をボイコットしていた。

(サンパウロ綾村悟)