ブラジル北東部の襲撃多発で治安部隊投入
ブラジル北東部のセアラ州で5日、今月2日からバス焼き討ちなどの凶悪犯罪が続いている州都フォルタレーザ市などに国家治安特殊部隊が投入された。政府系ブラジル通信などが報じた。
同市では2日から4日にかけて市営バスの焼き討ちや幹線道路の爆破など、犯罪者による暴動が連続して発生。銀行や市役所、警察署までもが襲撃を受ける事態となっている。
暴動発生の原因は、州の刑務所管理局幹部が刑務所内に持ち込まれている携帯電話の押収や対立する犯罪組織構成員の収監振り分け停止などを明言したため。刑務所に収監された犯罪組織幹部らは携帯電話で外部に指示を出すことが日常的に行われているほか、刑務所内でも犯罪組織同士の抗争が絶えないことから、今回の措置は犯罪組織の強い反発を招いた。
犯罪者らは、刑務所内での暴動を起こしただけでなく、4日までにフォルタレーザ市とその近郊都市でバスの焼き討ちなど40以上の襲撃事件を起こした。相次ぐ暴動と襲撃でセアラ州各都市の治安は悪化、市民は外出を控えるなど州都の機能は麻痺(まひ)状態となっている。
こうした中、セアラ州知事は、ブラジル政府に治安部隊の派遣を要請。モロ法相は4日、300人からなる国家治安特殊部隊の派遣を決定した。治安部隊は5日午前から治安維持に出動、現地メディアによると暴動や襲撃は目に見えて減ったという。
ブラジルでは近年、凶悪犯罪の増加が社会問題となっている。今月1日に就任した元軍人で右派のボルソナロ新大統領は、銃規制の緩和や凶悪犯罪の厳罰化などを公約に昨年10月の大統領選挙で当選、治安維持は最優先政策の一つだ。治安を担当する法相には、判事時代にブラジル史上最大の汚職事件で多くの政治家らを追い詰めた「英雄」モロ氏を起用。新政権は発足早々、手腕を問われる事態に直面している。
(サンパウロ綾村悟)