20年の米次期大統領選、混戦模様の民主候補指名争い

 2019年を迎え、20年米大統領選でトランプ大統領の再選阻止を目指す民主党候補の指名獲得に向けた動きが加速する。30人以上が大統領選への出馬を検討しているとされる。出馬が取り沙汰される主な人物を探ってみた。
(ワシントン・山崎洋介)

本命不在、30人以上が出馬検討

 昨年、民主党の大統領選の有力候補の一人として急浮上したのが、ベト・オルーク氏(46)だ。

ベト・オルーク前下院議員

昨年10月、テキサス州上院選で聴衆を前に演説するベト・オルーク前下院議員(UPI)

 下院議員を3期務めたオルーク氏は、上院への鞍(くら)替えを目指し、昨年11月の中間選挙に出馬。30年間民主党候補が勝ったことがない保守色の強いテキサス州で、共和党の現職テッド・クルーズ氏を相手に敗れはしたものの、約2・6ポイント差の接戦を演じたことで注目を集めた。

 オルーク氏は、動画をリアルタイムで配信するライブストリーミングやツイッターを活用した選挙活動で支持を広げた。特に、ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の選手が黒人差別に抗議するために国歌斉唱時に片膝をついたことが「国や退役軍人に対する冒瀆(ぼうとく)」とされた問題について、黒人の公民権運動の歴史を引き合いに出し、「膝をついて抗議することほど米国人らしいことはない」と擁護。その動画がネット上に出回り、リベラル派の間で急速に支持が高まった。党派対立の融和も訴えたことから、「オバマ氏の再来」とも言われ、大統領選への出馬の期待も高まっている。

 CNNテレビが12月に民主党員や民主党寄りの無党派を対象に行った世論調査では、大統領候補として支持するのは、ジョー・バイデン前副大統領(76)が30%、自称社会民主主義者のバーニー・サンダース上院議員(77)が14%だったのに続いて、オルーク氏が9%で3位となっている。

 一方で、オルーク氏がオバマ氏のように大統領選を勝ち抜くことができるかについては、懐疑的な見方もある。

 ワシントン・エグザミナー誌のフィリップ・クライン氏は、当時のオバマ氏について、①大統領選の4年前から民主党大会のスピーチを称賛されるなど注目を集めていた②当選すれば黒人初の大統領になる候補としてリベラル派の白人や若者、黒人層の票を固めることができた③02年の時点でイラク戦争に反対を表明していたことで、賛成したヒラリー・クリントン氏ら経験豊富なライバルに対して有利となった―と指摘。政治経験が浅い上に、こうした条件を持たないオルーク氏は「大統領選候補としては基盤が弱い」としている。

 一方、各種世論調査で軒並み1位となっているのは、知名度の高いバイデン氏だ。

 バイデン氏は、昨年11月の中間選挙では、約20州で65の候補者を支援して回った。中西部の工業地帯「ラストベルト」のペンシルベニア州スクラトン出身でもあり、16年の大統領選でトランプ氏の支持に回った白人労働者層から一定の支持もある。

 前回予備選でクリントン氏と接戦を演じたサンダース氏は、世論調査でバイデン氏に次ぐ支持を集め、今も根強い人気を保っている。

 バイデン、サンダース両氏に共通する強みは、「忠実な支持者がいる上に、資金集めのネットワークを持っていて、しっかりとした政策があること」(政治専門紙ポリティコ)などが挙げられる。ただ、共に年齢が70代後半であるほか、過去の予備選で敗北している。新味に欠ける印象は拭えない。

 このほか、前回の予備選で出馬すればクリントン氏の脅威になるともみられていたエリザベス・ウォーレン上院議員(69)、昨年の中間選挙でラストベルトのミネソタ州で24ポイント差で勝利したエイミー・クロブチャー上院議員(58)、黒人のカマラ・ハリス上院議員(54)など女性の名前も多数挙がっている。

 ただ、今のところ民主党の大統領選候補として本命視されるほど有力な人物はおらず、今後の展開が注目されるところだ。