トランプ再選へ課題、穏健派・無党派へ支持拡大必要
トランプ米大統領の「信任投票」とされる米中間選挙では、下院は野党民主党が多数派を奪回した一方、上院では与党共和党が過半数を確保し、議席を上積みした。2020年の大統領選に向け与野党が動きだす中、その意味と、今後の米政治の行方を探る。(ワシントン・山崎洋介)
「民主党は下院で勝ったが、選挙に勝ったのはトランプ氏だ」。ブッシュ(父)元政権で政治コンサルタントを務めたエド・ロジャース氏は7日のワシントン・ポスト紙(電子版)で、こうした見出しの記事を発表した。
この中でロジャース氏は、民主党や主要メディアの多くは、民主党が圧勝することで「トランプ氏が有権者たちから明白に拒絶されることを期待したが、そうはならなかった」と指摘。「リベラル派は認めたがらないが、トランプ氏は共和党にとって強みとなっている」と主張した。
今回の選挙戦で、トランプ氏は保守地盤の州を中心に各地を精力的に遊説。そこで、支持者を活気づかせたことは、共和党候補にとって追い風となったとみられる。特に、インディアナ、テネシー、ノースダコタなどの保守色の強い上院接戦州で、トランプ氏のテコ入れを受けた新人が当選。トランプを強固に支持する草の根保守の勢力が存在することを改めて印象付けた。
一方、下院では、三十数議席を失う見通しとなり敗北。ただ、1994年にクリントン元大統領が54議席、2010年のオバマ前大統領が63議席を下院でそれぞれ失った時のような惨敗は免れた形となった。
かつてトランプ氏は、共和党主流派に対し反エスタブリッシュメントのスタンスを取る「異端」だった。しかし今では、共和党支持者から8割以上の支持を集めるトランプ氏からの支援に頼る候補が増えるなど、共和党は「良くも悪くも、よりトランプ氏のポピュリスト的な政党となった」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)とも言われる。
ただ、民主党や自身に批判的なメディア、移民などを槍玉(やりだま)に挙げるトランプ氏の挑発的なスタイルは、コアな支持者の共感を呼ぶ半面、穏健な共和党支持者や無党派層を遠ざけた。
下院では、郊外型と言われる高学歴層が多く住む選挙区で、トランプ氏の不人気による逆風を受け共和党穏健派らが相次いで落選。また、16年の大統領選で勝因となった「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」と呼ばれるウィスコンシン、ミシガン両州の共和党現職が敗れたことは、20年の大統領選に向けて、懸念材料となった。
トランプ氏の再選には、穏健な共和党支持者や無党派層からも支持を広げる努力が必要との見方も強いことから、トランプ氏に好意的な保守派からも懸念の声が少なくない。
保守系誌「アメリカン・コンサバティブ」のジェームズ・アントル氏は、大型減税などの共和党の伝統的な政策による好調な経済は、「トランプ氏をもっと人気のある大統領にしてもおかしくないはずだ」と指摘。しかし「支持者を楽しませるトランプ氏の攻撃的なスタイルは、一部の共和党支持者を含め多くの有権者に不快感を抱かせた。それが、トランプ氏の支持率を50%以下に低迷させている」として、幅広い支持を得る努力を求めた。