革新勢力振るわず、民主党は路線対立の表面化も
今回の米中間選挙で注目を集めていたのが、今年夏以降に社会主義的政策を訴え民主党予備選で台頭した革新勢力だ。
6月にはニューヨーク州の下院予備選で、28歳の新人女性候補、オカシオコルテス氏が民主党の重鎮を破る番狂わせで一躍注目を集めた。前回の大統領選で旋風を起こしたバーニー・サンダース上院議員と同じく「民主社会主義者」を自称するオカシオコルテス氏の勝利は、革新勢力台頭の象徴とされた。
その後の予備選でも、革新勢力の新人がベテラン議員を破る番狂わせは続いた。こうした勢いが、中間選挙で民主党に活力をもたらし、「ブルーウエーブ(民主党旋風)」を起こすと言われるなど、脚光を浴びた。
しかし、6日の本選挙の結果は、振るわなかった。もともと民主党地盤である都市部の下院選挙区から出馬したオカシオコルテス氏らは勝利した一方、ペンシルベニア州やバージニア州などの接戦区で革新勢力の候補が相次いで敗北した。
むしろ接戦区で共和党に競り勝ったのは、イデオロギー色を抑え、医療保険制度の充実などを掲げた民主党候補だった。都市郊外で、こうした候補がトランプ氏への反発心が強い大卒女性たちの票を取り込んだことが、下院における民主党の主な勝因となった。
米ネットメディア「ヴォックス」は、「詰まるところ、2018年は革新勢力にとって勝利の年ではなかった」とその低調ぶりを指摘している。
それでも、勢いを見せた候補者もいた。保守地盤のテキサス州上院選では、サンダース氏の掲げる全国民へのメディケア(高齢者・障害者向け医療保険)拡大計画などを支持するベト・オルーク候補が、共和党のテッド・クルーズ氏相手に善戦。浮動票が多いフロリダ州の知事選では、サンダース氏が支援するアンドリュー・ギラム氏は共和党候補と僅差のため再集計となった。
サンダース氏は、英紙ガーディアンに「フロリダやテキサスで起きた熱狂は、長い間見られなかったものだ」と述べ、次期大統領選を見据え手応えを語っている。
選挙の結果、下院の多数派を握った民主党だが、党トップのペロシ院内総務ら主流派と革新勢力では意見の隔たりが大きいのが現状だ。
革新勢力側は、民主党の公約集にはないメディケア拡大計画や公立大学の授業料無償化を掲げるほか、トランプ大統領に対する弾劾を主張している。
しかし、弾劾には下院での発議後、与党共和党が多数派を握る上院で3分の2の賛成が必要となるなどハードルは高い。CNNテレビによる今回の出口調査では、トランプ氏への弾劾について賛成39%に対し、反対が56%となっており、性急に動けば、かえって世論の反発を招く可能性がある。
このため、ペロシ氏は7日の会見で「今は弾劾を考えるときではない」と、慎重な構えだ。
選挙戦最終盤ではトランプ氏を批判するオバマ前大統領が注目を集めたが、その一方で強い求心力を持つ民主党の「新しい顔」は見つかっていない。こうした中、2年後の大統領予備選を前に、両派の路線対立が表面化する可能性もある。
(ワシントン・山崎洋介)