存在感高める「革新勢力」


米民主党 主流派は左傾化を警戒

 11月に米中間選挙を控える中、民主党内で、主流派から距離を置き、社会主義的な政策を支持する「革新勢力」が存在感を高めている。一方で、主流派は、党が左傾化を強めれば選挙に不利に働く恐れがあることから、警戒感を示している。

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支持者を前に演説するアレキサンドリア・オカシオ・コーテズ氏(支持者のツイッターより)

 中間選挙に向けた民主党予備選では、既存政治への不満を背景に、革新勢力が勢いを示している。6月下旬にニューヨークで「民主社会主義者」を自称する28歳の新人女性、アレキサンドリア・オカシオ・コーテズ氏が党下院ナンバー4のベテラン議員に予備選で勝利。予想外の番狂わせとして注目を集めた。

 ブルッキングス研究所の調査によると、7月時点で予備選が終わった31州で勝利した、自らを「革新」と位置付ける候補は81人で、前回の31人から急増した。

 この勢いは、先週発表された世論調査でも裏付けられている。ギャラップ社によると民主党員のうち57%が社会主義に「肯定的」だと回答し、資本主義の47%をこの10年間で初めて上回った。

 こうした結果に、前回の大統領選で旋風を起こした社会主義者のバーニー・サンダース上院議員は15日のテレビ番組で、社会主義は多くの米国人の支持を集め「主流になった」と主張した。サンダース氏が昨年発表した全国民にメディケア(高齢者・障害者向け医療保険)を拡大する計画は、エリザベス・ウォーレン上院議員ら次期大統領選候補とされる人たちが相次いで支持を表明するなど、党内で支持を集めている。

 民主党のストラテジスト、ブラッド・バノン氏は、政治専門誌「ザ・ヒル」で、予備選でサンダース氏が掲げる政策を支持しない候補者は「流れに逆らって泳ぐようなもの」だと指摘した。

 その一方で、こうした状況に党主流派は警戒感を示している。保守寄りの無党派層や共和党支持層の間には社会主義に対する抵抗感が強く、革新派が民主党内で影響力を強めれば、中間選挙での過半数議席の獲得や次期大統領選挙の勝利を目指す上で、不利に働くとの見方が強い。

 民主党主流派のマキシン・ウォーターズ下院議員は、先月のテレビ番組で「民主党は社会主義者の党ではない」と強調。「一部の人が『左派の中の左派』というだけで、わが党の性格が決定付けられるべきではない」と反発を示した。

 他方、コーテズ氏も所属する米最大の社会主義団体「アメリカ民主社会主義者」(DSA)のメーガン・デイ氏は、米ネットメディア「ヴォックス」でサンダース氏が掲げるメディケア拡大計画などの政策は、「最終的には資本主義を打倒するための長いプロセスの一部」だと主張する。こうした考えは、資本主義体制の中で、社会保障の充実や再分配の強化を目指す主流派の立場とは相いれないものだ。

 内部分裂傾向を強める民主党について、ラトガース大学のデビッド・グリーンバーグ教授はワシントン・ポスト紙で、今後、党内で主流派と革新派による「内紛が起きることはおそらく避けられない」と予測している。

(ワシントン山崎洋介)