中国のスパイ活動に懸念広がる、米上院でZTE制裁復活へ法案可決

トランプ政権は条項削除要求

 トランプ米政権が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)に科していた制裁の解除を決めたことをめぐって、これに反発する超党派の議員が再発動に向けた立法措置を目指している。上院は18日、ZTEに対する米国製部品の販売を再び禁止する法案を可決した。背景には、ZTEなど中国の通信機器メーカーによるスパイ活動への懸念が広がっていることがある。(ワシントン・山崎洋介)

中興通訊

中国広東省深 市にある通信機器大手の中興通訊(ZTE)本社=5月14日(EPA時事)

 米商務省は4月、ZTEがイランと北朝鮮への禁輸措置に違反したことに絡み、同社に対し米国企業との取引を7年間禁止する制裁を発表した。多くの部品を米国に頼ってきた同社は、この制裁により事実上の休業状態に追い込まれていた。

 これに対し、中国の習近平国家主席は米国に制裁解除を要求。これが米中の貿易協議で焦点の一つとなる中、トランプ大統領は先月中旬、ツイッターでZTEの事業を再開させる意向を表明した。

 これを受け、商務省は今月7日、ZTEと制裁の見直しで合意したと発表。10億㌦(約1100億円)の制裁金の支払いを求めるほか、事業を監視するため米当局者を同社に送り込むことを明らかにした。

 この決定に対し、議員からは「中国の圧力によって米国が譲歩したさらなる事例となる」(マルコ・ルビオ上院議員)などと反発が広がった。

 上院では、共和党のトム・コットン議員や民主党のクリス・バンホーレン議員が主導し、国防予算の大枠を決める来年度の国防権限法案にZTEへの制裁を再び発動する条項を盛り込んだ。同法案には共和党の上院幹部らも支持するなど、超党派の支持を集め、18日の採決では賛成85、反対10で可決した。

 同法案が幅広い支持を集めたのは、ZTEが北朝鮮、イランへの禁輸措置に違反しただけでなく、安全保障上の懸念があるからだ。ZTEは、同業の華為技術(ファーウェイ)と共に中国政府との関係が深く、通信機器がスパイ活動に利用される恐れがあるとされる。米議会は2012年の報告で、ZTEとファーウェイを国家安保上の脅威に指定している。

 コットン議員は、7日に発表した声明で「ZTEは北朝鮮やイランなどのならず者国家と取引した記録があるだけでなく、広範囲で中国共産党と密接な関係がある」と指摘し、同社に再び制裁を科す必要性を訴えていた。

 下院では先月、ZTEに関する条項が盛り込まれていない国防権限法案がすでに可決されている。成立に向けては、今後、両院協議会で擦り合わせやトランプ氏の署名が必要で、最終的にZTEへの制裁復活が盛り込まれるかは不透明だ。

 こうした議会に対し、トランプ政権はZTEに関する条項を法案から削除するために働き掛けを強めている。ホワイトハウスは13日の声明で、ZTEに科した制裁金や監視強化について「十分に厳しい措置」だと強調。議会に「三権分立を尊重するよう働き掛ける」として、大統領の権限を制約しないよう求めた。米メディアによると、ロス商務長官は先週、共和党議員との会合で、中国との合意内容について説明した。

 ホワイトハウスのマーク・ショート議会担当補佐官は13日、CNBCテレビに対し、トランプ氏がZTEへの制裁解除を北朝鮮の非核化に向けて中国の協力を引き出すための取引材料の一つと捉えていると指摘。トランプ氏は「これまで中国が助けになったと考えている」と述べ、制裁解除に理解を求めた。

 一方で、共和党のボブ・コーカー上院議員は、制裁の再発動を盛り込んだ同法案について、トランプ氏が「暗黙の了解をしたと聞いた」と指摘。「トランプ氏は中国の指導者ために(制裁解除を)行ったが、議会が何をするかについてあまり気に掛けていないと思う」と述べた。