ポンペオ長官、世界の平和と安定に尽力を
米中央情報局(CIA)長官を務めたマイク・ポンペオ氏が国務長官に就任した。トランプ大統領と共に世界の平和と安定に尽力してほしい。
秘密訪朝で正恩氏と会談
国務長官を解任されたティラーソン氏の後任にポンペオ氏を充てることは先月、トランプ氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談する意向を示してから数日後に明らかにされた。トランプ氏が米朝首脳会談開催を直ちに決めたのも、正恩氏が会談を望んでいるとの情報をCIAがつかんでいたからだ。
ポンペオ氏は3月末に北朝鮮を秘密訪問し、正恩氏と会談した。米朝首脳会談に向け、前提条件などについて話し合ったとみられる。
ポンペオ氏はかつてオバマ前政権によるイラン核交渉に反対し、同国への空爆を主張するなど強硬な立場だ。それはトランプ氏に通じるものがある。トランプ氏は「われわれは常に波長が合う」と述べている。
北朝鮮は今月、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射を中止した。南北首脳会談では、韓国の文在寅大統領と正恩氏が「完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現する」という共通の目標を盛り込んだ板門店宣言に署名した。
だが、国際社会が求める「北朝鮮の非核化」に向けた具体的な道筋は見えない。北朝鮮は、日本が射程に入る中・短距離弾道ミサイルの廃棄にも触れていない。
ポンペオ氏は6月初旬までに開かれる予定の米朝首脳会談に関連し、北朝鮮が不可逆的な非核化の措置を講じる前に見返りを与えることはないと強調して北朝鮮を牽制(けんせい)した。米国は中・短距離ミサイルの廃棄も求めていく方針だ。過去の交渉の失敗を繰り返してはならない。日韓両国との緊密な連携も求められよう。
一方、米大統領選介入やサイバー攻撃などをめぐり対立を深めるロシアについて、ポンペオ氏は「ロシアの拡大主義に軟弱な政策で応じる時代は終わった」と指摘。「米国にとっての脅威」と対抗姿勢を鮮明にした。
英国で3月に起きた元ロシア情報員暗殺未遂事件をめぐっては、米欧とロシアの対立が大規模な外交官追放合戦に発展。背景には、ロシアの軍用神経剤「ノビチョク」が使用されたことを米国が重く見たことがある。
ロシアはシリアによる化学兵器使用についても、国連安全保障理事会で米作成の決議案に拒否権を行使するなど、使用を容認するかのような態度を示している。その意味で、ポンペオ氏が北大西洋条約機構(NATO)外相理事会で欧州との同盟関係を重視する姿勢を打ち出したことの意義は大きい。
CIA時代の経験生かせ
外交を遂行するには情報の正確さに基づくことが必須とされる。ポンペオ氏には、CIA長官時代の実績と経験を生かしてほしい。
ただ国務長官は、世界で米国の価値観、考えを代表する重要な役職である。米国の伝統的な外交理念と手法も重んじなければならない。米外交の司令塔としてのポンペオ氏の活躍に期待したい。