ルラ元ブラジル大統領が収監


10月の大統領選挙出馬は困難に

 収賄罪などで禁錮12年1月の有罪判決を受けているブラジルのルラ元大統領(72)が7日夜(日本時間8日朝)、同国南部パラナ州のクリチバにある連邦警察に用意された特別施設に収監された。地元メディアによると、ブラジルの大統領経験者が収賄などの罪で実際に収監されるのは初めてのことだという。

ルラ氏

ルラ元大統領(AFP=時事)

 在任時に8割を超える支持率を誇った「カリスマ政治家」の収監は、ブラジルで最大級のニュースとして扱われており、ルラ被告が収監される様子は、大手メディアなどを通じてブラジル全土に生中継された。

 ルラ被告に対しては、在任時(2003-10)に国内大手のゼネコンから、受注の見返りとしてサンパウロ市郊外のマンションなどを受け取った容疑などがかけられていた。

 2審で有罪判決を下されたルラ被告に対して、クリチバの裁判所は6日午後までに連邦警察に出頭するように求めていた。しかし、ルラ被告は、サンパウロ市近郊の金属工労働組合の建物に「籠城」、弁護団も収監を避けるべく裁判所と交渉を続けていた。ルラ被告は、組合上がりの叩き上げの政治家として知られており、ブラジルの貧困層や労働組合を中心に、今でも熱烈な支持層を抱えている。

 ルラ被告は、自身に対する容疑が政治的な動機に基づいたものだと主張しており、収監後も上訴を続ける方針だ。

 一方、今回の収監により、同被告が目指していた10月の大統領選挙への出馬は難しくなった。これまでの世論調査では、ルラ被告は支持率トップで最有力候補の1人に挙げられていた。カリスマ政治家とされる同被告の出馬が見込めない現在、ブラジルの大統領選挙は、ルラ被告の今後の動向も含めて先が読めない状況となっている。

(サンパウロ綾村悟)