ペルーでフジモリ派が分裂、次男ケンジ氏が姉ケイコ氏と決別
次期大統領選のダークホースに
南米ペルーで、フジモリ元大統領の恩赦が思わぬ波紋を広げている。次男ケンジ氏が最大野党のフジモリ派を離脱、2021年の大統領選に向けてダークホースとなりつつある。(サンパウロ・綾村悟)
調査会社イプソスは11日、2021年に予定されている大統領選の最新世論調査結果を発表した。フジモリ元大統領の次男で最大野党のフジモリ派「人民勢力党」を離党したケンジ・フジモリ国会議員(37)が支持率11%で3位に付けていることが分かった。
人民勢力党の党首でフジモリ元大統領の長女ケイコ・フジモリ氏(42)が、支持率21%でトップ。2位にフリオ・グスマン元開発相(47)が入っている。
ペルー国会の最大勢力として過半数を占めてきた人民勢力党は昨年、汚職疑惑が浮上したクチンスキ大統領に対して罷免決議案を提出した。しかし、ケンジ氏を中心とした議員10人が造反して罷免投票を棄権、クチンスキ氏の罷免が回避された経緯がある。
ケイコ氏とクチンスキ氏は16年大統領選以来、因縁の関係にある。大統領選は当初、ケイコ氏優勢で進んだが、決選投票ではクチンスキ氏がフジモリ元大統領に反発心を持つペルー世論を喚起する批判キャンペーンを展開、僅差でケイコ氏が敗れた。
ケイコ氏はその後、人民勢力党が国会で過半数を占めると、クチンスキ政権が提出する議案をことごとく否決。さらには全閣僚の不信任案を国会にかけるなど強硬的な態度を貫いてきた。
その一方で、ケイコ氏は、過去2度の大統領選で決選投票まで進みながらも、最後は反フジモリの国内世論に押されて敗退していることから、近年はフジモリ元大統領の恩赦を求めるトーンを抑えていた。
一方、次男ケンジ氏は、フジモリ元大統領の恩赦とクチンスキ政権への国会対応で、昨年からケイコ氏と意見が対立するようになった。ケンジ氏は、過去2回の大統領選で敗れたことから党内が硬直化していると批判、党首のケイコ氏は政治責任を取るべきだと主張していた。またケンジ氏は、フジモリ元大統領の恩赦に対しても積極的だった。
こうした中、クチンスキ氏は昨年12月24日、フジモリ元大統領の恩赦を発表した。フジモリ氏は、在任時に関わったとされる人権侵害事件などの罪で25年の実刑判決を受け、ペルー市郊外の警察施設に収監されていたが、恩赦発表の同日に釈放された。
ケンジ氏ら一派がクチンスキ大統領の罷免投票を棄権した時期と、フジモリ元大統領の恩赦時期が重なったことなどから、ケンジ氏とクチンスキ大統領の間で、裏取引があったとの報道が相次いだ。その後、ケンジ氏を含む罷免決議を棄権した議員らは先月31日、人民勢力党から追放処分の決定を受けて離党宣言を行っている。
ケンジ氏を含む元フジモリ派の国会議員10人は、新党を結成する意向を明らかにしており、人民勢力党からの議員引き抜きや他党との連携を視野に入れながら勢力を拡大する方針だ。
ケンジ氏はまた、クチンスキ政権を支持していくことも明らかにしており、ケイコ氏が率いる人民勢力党と袂(たもと)を分かつことになる。ケンジ氏らが抜けた後、人民勢力党は国会での過半数を維持できなくなっている。
姉と弟がフジモリ派を割る形になる中で、フジモリ元大統領は昨年7月、人民勢力党の政治スタンスを批判する発言も行っており、ケンジ氏と近い関係にあると言われている。
与党議員からは「われわれは今、フジモリ元大統領の政党が(ケンジ議員と共に)誕生するのを目撃しようとしている」との発言も聞かれるようになっており、ケンジ氏はフジモリ元大統領が築いた「フジモリズム」の正当な後継者として認められつつあるのが現状だ。