ルラ元ブラジル大統領、二審も有罪
大統領選出馬に影響
ブラジル南部ポルトアレグレの連邦控訴裁判所は24日、収賄の罪に問われたルラ元大統領(72)を有罪とした一審の判断を支持する判決を言い渡した。また、一審で禁固9年6月とした判決(昨年7月)を破棄し、禁固12年1月の有罪判決を下した。
判決では、ルラ氏は在任中の2006年から12年にかけて、ブラジルの建設大手OASに国営石油公社ペトロブラスとの契約を仲介した見返りとして、サンパウロ近郊の豪華マンションなど約220万レアル(約7500万円)の賄賂を受け取ったと判断された。
現地報道によると、二審では匿名の判事3人全員が有罪判決を支持したことにより、ルラ氏が上訴することはより難しくなったとされる。ルラ氏の弁護団は、今回の判決に対する異議申し立てを行う予定だが、却下された場合には身柄を拘束される可能性も出てきた。
ルラ氏に対しては、今回の裁判の他にも資金洗浄や連邦警察に対する捜査妨害などの罪で検察当局が起訴している。
一方、今回の判決に対する異議申し立てが認められなかった場合、ルラ氏は、刑事事件で二審でも有罪になったことにより、10月の大統領選挙への出馬が認められなくなる可能性が高い。
大統領選挙期間中は、候補者には不逮捕権が適用される他、大統領に当選すれば、その逮捕には最高裁での審理などが必要となり、ルラ氏には有罪判決を回避するための多くの手段が残されていた。
中道左派ブラジル労働党の党首でもあるルラ氏は、03年から11年の2期8年にわたってブラジルの大統領を務めた。貧困層出身で、旋盤工から労働組合を経て労働党を結成、ブラジルの大統領にまで上り詰めた立身出世の人物でもある。
ルラ氏の在任中は、ブラジルが資源ブームの真っただ中で経済成長をしていたことに加え、そのカリスマ性と貧困層向けの政策などで人気を博し、一時は80%近い支持率を誇っていた。また、ルラ氏はブラジルに、14年のサッカー・ワールドカップと16年のリオ夏季五輪を招致した立役者でもある。
現在も、ルラ氏は、貧困層や労働組合を中心に根強い人気を保っており、収賄や資金洗浄など多くの容疑を受けながらも、今年10月の大統領選挙に向けた世論調査では、支持率が大きくリードする勢いを見せていた。今後、ルラ氏が出馬を断念することになれば、10月の大統領選挙は極右のボルソナロ上院議員を含めた混戦となりそうだ。
(サンパウロ綾村悟)