トランプ大統領アジア歴訪、米の具体的戦略見えず


 トランプ米大統領はアジア歴訪を総括した声明で、北朝鮮に対する包囲網を強化したことや、貿易不均衡の是正を中国に訴えたことなどを挙げ、成果を強調した。アジア歴訪の最大の目的は北朝鮮に対する圧力強化を各国に訴えることだったため、その点では確かに実りがあった。

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14日、アジア歴訪から帰国しホワイトハウスのヘリポートに到着したトランプ米大統領(UPI)

 ただ、覇権主義的な動きを隠そうとしない中国にどう対抗するかという、アジア歴訪のもう一つのテーマについて具体的な戦略を打ち出せたかは疑問だ。

 トランプ氏は安倍晋三首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」をアジア訪問中に何度も語った。日米で一定の共通認識を持てたことは日本にとって大きな成果だが、アジアの安全保障に大きな影響力を持つ米国が独自の戦略を描き、積極的に地域の平和と安全に関わろうとする意思を示せたとまでは言えない。

 実際、ベトナム中部ダナンで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)関連会合の演説では、中国について語った内容の多くが経済や貿易不均衡についてで、南シナ海の軍事拠点化には触れなかった。

 帰国後に発表した声明でもインド太平洋戦略について語ったが、中国に関してはやはり経済問題が中心で、安保政策への具体的な言及はなかった。

 ナショナル・インタレスト・センターのハリー・カジアニス国防研究部長は「自由主義世界の指導者は、世界で起こっていることに対して独自の政策や戦略を持っている必要がある」とし、トランプ氏の発言からはそうしたビジョンが見えてこないと主張。その上で「今回のアジア歴訪には国家的な大戦略がなかった」と総括した。

 またワシントン・ポスト紙は、トランプ氏が米中関係を「二つの経済大国」と表現し、世界の問題解決に向けて2国間で協力していくと語ったことについて、「(アジア各国と協力して中国に対抗するという)インド太平洋戦略の精神とは明らかに矛盾している」と指摘。トランプ氏が具体的なアジア戦略を描けないままでは、中国が目指す「新型大国関係」に陥ってしまう可能性があると警鐘を鳴らした。

(ワシントン・岩城喜之)