「米国第一」バノン氏解任
政権方針と対立 ケリー氏が進言か
米ホワイトハウスは18日、スティーブ・バノン大統領首席戦略官・上級顧問が同日付で辞任すると発表した。事実上の解任とみられる。バノン氏は昨年の大統領選で選対本部最高責任者としてトランプ大統領を勝利に導いた立役者だったが、政権内部で対立を引き起こしていたことから、共和党内からも解任を求める声が高まっていた。
サンダース大統領報道官は声明で「ケリー首席補佐官とバノン氏は、本日をもってバノン氏の最終日とすることで互いに合意した」と述べた。トランプ政権は軍隊式の規律をホワイトハウスに持ち込んだケリー氏の統制が強まっており、今後は現実路線の政策を進めていく見通しだ。
バノン氏更迭論は、トランプ氏の長女イバンカ補佐官とクシュナー上級顧問夫妻との対立が長く続いていたため、米メディアでたびたび報じられていた。最近は外交政策をめぐってマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とも関係が悪化、16日には左派メディアで、北朝鮮問題の「軍事的解決はない」と、政権の方針と矛盾する発言をしたことが波紋を呼んだ。政権運営の安定化を図るためケリー氏がトランプ氏に解任を進言したとみられている。
バノン氏の辞任でホワイトハウス内の権力闘争や混乱が収まるとの見方がある。一方で、バノン氏が環太平洋連携協定(TPP)や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱など「米国第一」主義の政策を主導してきたことから、トランプ氏が中西部「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」に住む白人労働者の支持を一部失う可能性もある。
米メディアによると、バノン氏は14日で辞任する予定だったが、バージニア州で12日に起きた白人至上主義者らと反対派の衝突を受け、辞任を延期していた。
バノン氏は辞任後すぐに古巣の保守系メディア「ブライトバート」に復帰。ブルームバーグ通信のインタビューにも応じ、「私はホワイトハウスを去り、トランプ氏のために議会やメディア、大企業など彼の敵に対する戦争を始める」と語った。
(ワシントン岩城喜之)