米で「メリークリスマス」復活?

「脱キリスト教化」嫌うトランプ氏
保守派・宗教界が期待

 米国では近年、政教分離の原則や非キリスト教徒への配慮から「メリークリスマス」を「ハッピーホリデー」と言い換えるなど、クリスマスから宗教色を排除する風潮が顕著だ。だが、左翼勢力の圧力や「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」を恐れないトランプ次期大統領の登場を受け、保守派・宗教界はクリスマスの「脱キリスト教化」が改められることを強く期待している。(ワシントン・早川俊行)

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米ニューヨーク証券取引所前に設置されたクリスマスツリー

 キリスト教の伝統を米社会から排除しようとする左翼活動家団体の圧力により、公共の場に設置されたクリスマスの装飾が各地で論争を巻き起こすのは、年末の恒例行事と化している。

 例えば、ミズーリ州の高齢者向け公営住宅では、共用スペースから宗教的なクリスマスの装飾がすべて撤去された。連邦政府から資金を受けているため、差別を禁じた連邦法に従う必要があるとの理由だが、住民は「喜びが掃除機で吸い取られたようだ」と強く反発している。

 また、インディアナ州にある人口約2100人のナイツタウンという小さな町では、クリスマスツリーの先端に飾られていた十字架が撤去された。左翼法曹団体「全米自由人権協会」(ACLU)が、キリスト教のシンボルである十字架を公共の場に掲げるのは政教分離違反だと提訴し、訴訟費用を支払う余力のない町は撤去を余儀なくされたのだ。ただ、住民の抗議もあり、ツリーの中央部なら十字架を飾ることが認められた。

 テキサス州の公立中学校では、スヌーピーでおなじみの米人気漫画「ピーナッツ」のキャラクターとクリスマスに関する聖書の一節が書かれた職員の手作りポスターを撤去するよう命じられた。裁判所はポスターを合法と判断し、校内での掲示が認められたが、ケン・パクストン州司法長官は「キリスト教徒に対する宗教差別がホリデーの伝統になってしまった」と嘆いている。

 トランプ氏は大統領選で、クリスマスの脱キリスト教化の風潮を繰り返し批判してきた。当選後に開いた集会でも「我々は再びメリークリスマスと言えるようになる」と強調し、当たり前の挨拶ができなくなった現状に不満を抱く草の根有権者から喝采を浴びている。

 トランプ氏は決して敬虔(けいけん)なキリスト教徒ではないが、政治的に中立な言葉の使用を強制するポリティカル・コレクトネスを激しく嫌悪してきた。左翼勢力の圧力やポリティカル・コレクトネスのしがらみにとらわれないトランプ氏が次期大統領に選ばれたことで、現在の風潮が変わる可能性があるとの見方が出ている。

 保守系法曹組織「リバティ・カウンセル」のマット・ステイバー会長は、ワシントン・タイムズ紙に対し、トランプ氏の影響で来年は私的・公的両方の場でクリスマスの展示が増えると予想。「トランプ氏は大統領の立場で全米の注目を集めることになる。そのトランプ氏が表立ってメリークリスマスと言えば、全米に大きなインパクトを与えるだろう。具体的な結果が見られると思う」と、強い期待感を示している。