クリントン氏優勢で最終盤へ
トランプ氏、逆転の望み薄く
19日に開催された米大統領選の最後の直接対決、第3回テレビ討論会は、瀬戸際に立つ共和党候補ドナルド・トランプ氏がどこまで挽回できるかが最大の焦点だった。3回の討論会の中では「ベストパフォーマンス」(FOXニュース)との評価が多いものの、リードを広げる民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官を猛追する勢いを生み出すには不十分で、逆転の望みは一段と薄くなった。
トランプ氏は、クリントン氏が国務長官の立場を利用し、慈善団体「クリントン財団」に多額の献金をした外国政府に便宜を図った疑惑について、「財団は犯罪組織だ」と批判するなど、得点を稼ぐ場面が随所に見られた。
特に、2010年のハイチ地震に対する米政府の支援事業をクリントン財団への献金者が受注した問題をめぐっては、「ハイチの人々はクリントン夫妻を憎んでいる」と非難。ハイチ救済よりも自分たちの利益を優先したクリントン氏にハイチ人が憤っていることを指摘した。
また、クリントン氏が不法移民に市民権獲得の道を開く移民制度改革を目指していることについて、「米市民になるために列に並んで長年待っている人々に対して不公平だ」と効果的な批判を加えた。また、最高裁判事には中絶反対派を指名することや妊娠後期の女性に対する「部分出産中絶」への反対を改めて明言したことは、キリスト教福音派を中心とする社会保守派の支持を固めるのに役立つとみられる。
だが、最近、大統領選で不正が行われていると執拗(しつよう)に主張するトランプ氏は、討論会でも選挙結果を受け入れるかとの質問に「その時話す」と主張。候補者が選挙の正当性を認めなければ、民主主義の根幹を揺るがす恐れがあるだけに、この問題はトランプ氏に対する新たな批判材料となる可能性が高い。
ワシントン・ポスト紙は「トランプ氏にとって最も一貫性のある、ベストな討論会だった」としつつも、選挙結果の受け入れを約束しなかったことは「完全な大失敗だ」と断言。同紙は「クリントン氏が3回の討論会で全勝した」と指摘した。
選挙結果を左右する激戦州のほとんどでクリントン氏がリードを広げており、トランプ氏が逆転の望みを残すには、第3回討論会での大勝利が最後のチャンスだった。過去2回の討論会よりはいい出来だったと評価されているが、勝利には至らなかったことで、逆転の道はさらに狭まった。
(ワシントン早川俊行)