米大統領選、「サンダース氏は扇動家」

 米大統領選の民主党候補指名争いで、社会主義者を自任するバーニー・サンダース上院議員の支持者の行動が過激化している。14日にネバダ州で行われた集会では椅子を投げ付けるなど暴徒化したほか、同州の民主党委員長に脅迫メールを送るなど、「常軌を逸した」(AP通信)状況になっている。サンダース氏は声明で暴力を批判したが、支持者がこうした行為に走るのは、同氏の言動が原因だとの指摘もある。(ワシントン・岩城喜之)

支持者の過激化で批判集中

民主党結束乱せば本選不利に

 サンダース氏の支持者らは民主党がネバダ州で開いた集会で、全国党大会で投票権を持つ代議員の分配方法について「ヒラリー・クリントン前国務長官に有利な規則になっている」などと抗議。集会後にはネバダ州民主党委員長の電話番号と住所がネット上に公開され、1000件以上の電話やメールが殺到。その中には、5歳の孫に対する殺害の脅迫や女性委員長に対する性差別的なメッセージもあった。

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バーニー・サンダース氏(中央左)に握手を求める支持者ら(UPI)

 同州民主党委員会は「サンダース氏の支持者は暴力的な傾向にある」と強く批判。7月にペンシルベニア州フィラデルフィアで行われる全国党大会でも支持者が暴徒化する恐れがあると懸念を示した。

 党執行部は、サンダース氏に対して支持者の過激な行動を抑えるよう求めたが、17日に声明を出したサンダース氏は「米国民は既成の政治に怒っている」と主張して支持者を擁護。さらに米メディアとのインタビューで「民主主義は常におとなしいものではない」と暴力を肯定するかのような発言をするなど、「反抗的な態度を強めている」(ワシントン・ポスト紙)。

 民主党全国委員会のデビー・ワッサーマン・シュルツ委員長は、サンダース氏の対応を「容認できない」と批判。ジョー・バイデン副大統領もサンダース氏に態度を改めるよう求めている。

 ただ、社会主義者を自任し、「政治革命」を訴えるサンダース氏は、もともとウォール街(金融街)や資産家を過激な言葉でたたいて、熱狂的な支持を集めてきた経緯がある。

 こうしたことから、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長はサンダース氏を「扇動家だ」と非難。党内でも、サンダース氏が対立をあおっていると表立って批判する声が大きくなっている。

 民主党上層部がサンダース氏や支持者の過激化を抑えようとするのは、「結束を図ろうとする党の取り組みを台無しにする可能性がある」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と懸念しているためだ。

 サンダース氏の支持者は、公立大学の無償化など同氏の政策を党が取り入れなければ、全国大会で抗議活動を行うと主張している。同党幹部は、デモが勢いづけば党が分裂しているとの印象を有権者に与え、11月の大統領選本選で不利になると危惧する。

 このため、サンダース陣営との対立を回避しようと、全国大会で党の政策綱領を策定する委員のうち、3分の1の委員を同氏が指名する権利を認める方針だ。

 ただ、反抗的な態度で迫った要求を認めることへの反発もあり、党内では指名獲得がほぼ不可能な状況にあるサンダース氏の早期撤退を求める声がいっそう強まっている。