米保守派の年次集会CPAC、「トランプ氏は保守に非ず」
2016 米大統領選
過去のリベラル姿勢に批判
米共和党の大統領候補指名争いで“異端児”ドナルド・トランプ氏がトップを走る中、同党の支持基盤である保守派の活動家らが一堂に会する年次集会「保守政治行動会議(CPAC)」が2日から5日まで、ワシントン郊外で開催された。かつてリベラル寄りだったトランプ氏に対する保守派の不信感は極めて強く、会場は「反トランプ集会」の様相を呈した。(ワシントン・早川俊行)
保守主義運動が保守ではない人物に「ハイジャック」されてはならない――。指名争いで3位につけるマルコ・ルビオ上院議員がトランプ氏の指名獲得阻止を訴えると、参加者は一斉に立ち上がり、大歓声を送った。今年のCPACで最も盛り上がった瞬間の一つだ。2位のテッド・クルーズ上院議員もトランプ氏批判を繰り返し、盛大な拍手喝采を浴びた。
トランプ氏は指名争いで保守的な政策を打ち出しているにもかかわらず、保守派の知識層・活動家から毛嫌いされているのは、同氏には医療保険や銃規制、増税、中絶などの問題でリベラルな立場を取り、ヒラリー・クリントン前国務長官ら民主党議員に政治献金をしてきた過去があるからだ。
トランプ氏は不法移民1100万人の強制送還を主張しているが、2012年大統領選では、共和党候補ミット・ロムニー氏が不法移民に厳しい態度を取り、ヒスパニック(中南米系)票を失ったことを批判していた。
有力保守派団体「ティーパーティー・ペイトリオッツ」のジェニー・べス・マーティン会長は「いつでも自分にとって都合のいい立場を取るのがトランプ氏だ」と、大統領になるために保守を装う同氏を非難した。
トランプ氏はCPACで演説する予定だったが、土壇場でキャンセル。参加者からブーイングを浴びてイメージが悪化するリスクを回避したとみられる。実際、参加者の一部では、トランプ氏が登壇したら一斉に退場する計画があった。
一斉退場を試みようとしたジョージア州のウィリアム・テンプル氏(65)は、本紙の取材に「トランプ氏は全く保守ではない。ムソリーニのようだ。女性に対し誤った見方を持ち、道徳的な人物ではない」と断じた。
こうした反トランプムードを反映し、CPACで実施された共和党大統領候補を選ぶ模擬投票では、トランプ氏は得票率15%で3位に低迷。クルーズ氏が40%で1位を獲得し、ルビオ氏が30%で続いた。
ただ、トランプ氏はこれまでに行われた予備選・党員集会で保守的な有権者からも幅広い支持を得ており、保守派の間でもCPACに参加するコアな活動家と一般有権者の間には大きな温度差があることがうかがえる。
トランプ氏を応援するTシャツと帽子を身に着けてCPACに参加していたテキサス州のマイケル・ナイバーさん(67)は、「トランプ氏が保守かどうかは問題ではない。重要なのはトランプ氏こそが米国を再び偉大にできる人物であることだ」と語った。






