「オバマ氏は意図的に米国に損害」

共和ルビオ氏主張 発言重複に批判も保守派は支持

 オバマ大統領は意図的に米国にダメージを与えた――。政権奪還を狙う共和党の大統領候補たちはオバマ氏批判を展開しているが、中でもこう主張しているのが、マルコ・ルビオ上院議員だ。ルビオ氏は同様の主張を討論会で何度も繰り返したことで批判を浴びたが、米国の威信低下は超リベラルな政治哲学、世界観を持つオバマ氏の意図的な結果であるとの指摘は、極めて重要な視点だ。
(ワシントン・早川俊行)

 「オバマ氏は自分が何をしているのか分かっていないというフィクションはこれを最後に捨てよう。オバマ氏は自分が何をしているのかはっきり分かっている」。6日に行われた共和党大統領候補討論会で、ルビオ氏はこう訴えた。

ルビオ氏

6日、米共和党大統領候補討論会でオバマ大統領批判を繰り返したマルコ・ルビオ上院議員(UPI)

 2期にわたるオバマ氏の政権運営で米国は大きく傷ついたとの認識で共和党大統領候補は一致している。だが、それをオバマ氏の能力・経験不足や失政に起因すると結論付ける見方に対し、ルビオ氏は異を唱えたのだ。

 ルビオ氏は「オバマ氏が米国に与えたダメージは意図的なものだ。この国の再定義を試みているのだ」と断言。つまり、オバマ氏は決して理念なき無能な指導者ではなく、左翼思想に基づき米国の伝統的な国家の在り方や価値観を破壊を試みた“確信犯”だというのが、ルビオ氏の見方である。

 オバマ氏は医療保険制度改革(オバマケア)を筆頭に政府の役割を肥大化させる「大きな政府」路線を推進し、社会問題では同性婚を支持するなど米社会の世俗化を後押しした。また、国際問題への関与を減らす内向きな外交政策と国防費の大幅削減によって、対外的にも米国の威信は大きく揺らいだ。

 こうしたオバマ氏のリベラル路線は、民間活力と自助努力を重視する「小さな政府」やキリスト教の伝統に基づく価値観、対外的には強力な指導力と軍事力を持った「強い米国」を支持するルビオ氏の目には、米国に対する「意図的」な攻撃と映るわけだ。

 だが、ルビオ氏は討論会で同様の主張を4回も繰り返したために、クリス・クリスティー・ニュージャージー州知事から決まったフレーズしか語れない未熟な政治家であると痛烈な批判を浴びた。これが響いて失速したルビオ氏は、9日のニューハンプシャー州予備選で惨敗している。

 討論会では、不動産王ドナルド・トランプ氏からも「(オバマ氏は)完全に無能な大統領だ。自分が何をしているのか分かっていない」と反論された。

 これに対し、保守派論客からは「ルビオ氏は正しい」と擁護する意見が相次いだ。人気ラジオホスト、ラッシュ・リンボー氏は「オバマ氏が意図的に行動していることは仮説ではなく事実だ。クリスティー、トランプ両氏はなぜそれをばかにするのか」と、むしろオバマ氏の本性を正しく語らない他候補を批判した。

 また、元ボストン・ヘラルド紙のコラムニスト、ドン・フェダー氏は、ワシントン・タイムズ紙への寄稿で「大統領は米国を貧しく、弱い国にし、政府を肥大化させ、(国民の政府)依存を高めることを望む左翼の筋金入りイデオローグだ」と断言。オバマ氏の世界観は、同氏が若い頃に務めたコミュニティー・オーガナイザーの理論を体系化した極左活動家ソウル・アリンスキー氏や、シカゴ時代に密接な関係を築いた元極左テロリストのビル・エアーズ氏、反米・白人敵視のジェレマイア・ライト牧師と同一であると論じた。

 若くてカリスマ性のあるルビオ氏は、11月の本戦で民主党の本命ヒラリー・クリントン前国務長官に勝てる可能性が最も高い候補との評価があるが、この一件で深刻なダメージを負った。このため、ルビオ氏を攻撃したクリスティーは「民主党に現物出資した」(トレイ・ガウディ共和党下院議員)との見方も。皮肉にも、そのクリスティー氏はニューハンプシャー州予備選の翌日、大統領選から撤退している。