キューバ、民主主義体制の確立が必須だ


 オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長は、第7回米州首脳会議(サミット)が開かれた中米のパナマで初めての首脳会談を行った。両国首脳の直接会談は、冷戦期の1961年の国交断絶以来、初めてであり、国交正常化に向けて前進が期待される。

米と歴史的な首脳会談

 オバマ大統領とカストロ議長は昨年12月、半世紀以上の対立の解消に向け、両国の国交回復に取り組む方針を発表。代表団による3回の国交正常化交渉を経て今回の非公式の首脳会談となった。

 会談ではオバマ大統領が先に口を開き、「これは明らかに歴史的な会談だ」と表明し、両国が「未来への道を進む立場」を共有していることを強調、両国の大使館の再開が緊急の課題だと述べた。

 一方、交渉を通じて両国の間には意見の隔たりがあることも付け加え、「民主主義と人権に関する懸念を提起し続ける」とも強調した。国交回復に向け、イニシアチブを取りたいオバマ大統領の苦悩が見え隠れする。

 カストロ議長はあらゆる課題を議論する用意があると述べたが、「かなりの忍耐が必要だ」と指摘した。いずれにせよ、両国首脳が膝を交えて話し合ったことで、両国関係の大きな節目を迎えたと言ってよい。

 オバマ政権の6年間、中南米諸国との交わりを振り返ると、2010年のハイチ大地震支援、11年のブラジル、チリ、エルサルバドル歴訪以外目立った動きがなく、米国の裏庭と呼ばれる中南米に対する関心が低いと言われ続けてきた。

 米州サミットはオバマ大統領にとって、キューバとの歩み寄りを演出することで中南米への積極的関心を示し、同諸国との融和を進める絶好の機会となったと捉えて間違いない。

 しかし、これまでオバマ政権がサミット招請条件である「民主的に選ばれた首脳に限る」を理由に、共産主義体制下で人権侵害が続くキューバの参加に反対してきたことを忘れてはなるまい。東西冷戦の残滓(ざんし)としての数少ない社会主義国で独裁国家のキューバが姿を変え、米国と価値観を共有する国家に変身すれば、国交正常化は成功ということになる。

 民主主義国米国としては今後も、キューバの体制変革に圧力を掛け続けなければならない。反政府抗議運動を弾圧したベネズエラ政府高官に対し、3月に金融制裁処置を発表したルー米財務長官は「人権や表現の自由を踏みにじり、民主政治に対する同国民の信頼を損ねた」と語った。ベネズエラはキューバの同盟国、最大の貿易相手国だ。

 米議会では民主、共和両党を問わず、カストロ政権が反体制派に対する人権弾圧を続けていることに批判が相次いでいる。

オバマ氏は譲歩避けよ

 たとえ国交を回復しても人権問題の改善が保証されない限り、反体制派への支援は意味のないものになってしまう。米国がこうした点に目をつぶり、大きな譲歩をしてまでも交渉を続けるとすれば、それはオバマ大統領の露骨なレガシー(政治的遺産)作りの一環とみられても仕方がない。

(4月㏭付社説)