日米欧 対露制裁発動 ウクライナ情勢


高官などの資産凍結
首相、外相会談も中止

22日、ホワイトハウスで演説するバイデン米大統領(EPA時事)

 バイデン米大統領は22日、ホワイトハウスで演説し、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親露派支配地域の独立を一方的に承認し、派兵を決定したことについて、「ロシアによる侵攻の始まりだ」と非難。第1弾となる対露制裁を発表した。バイデン氏は「端的に言えば、ロシアはウクライナの領土の大きな一部を切り取ることを発表した」とした上で、プーチン氏が「力によりさらなる領土を奪うための口実を設定した」と批判。さらに「紛れもない国際法違反であり、国際社会の断固たる対応が求められる」と訴えた。

 バイデン政権高官は21日夜、ロシアの行動を「侵攻」とすることを避けていたが、その立場を転換させた。

 バイデン政権は対露制裁として、開発対外経済銀行(VEB)など軍とつながりの深いロシアの二つの大手金融機関に対し、米国の資産を凍結するとともに、米国の個人や企業との取引を禁止すると発表。また、ロシア政府が欧米の市場で新たな債券を発行できなくするほか、ロシアのエリート層とその家族も制裁対象とした。

 欧米諸国も相次いで制裁を発表。欧州連合(EU)は、親露派地域独立に賛成したロシア議員らの資産凍結を発動。ドイツは、ロシアからの天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」の事業凍結を決定した。

 

 バイデン氏は、ロシアがウクライナからクリミア半島を併合した2014年に米国とその同盟国が科した制裁を「はるかに超えている」とした上で、「ロシアが攻撃をさらに進めれば、さらに制裁を科す準備ができている」と牽制(けんせい)した。

 また、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国に米軍部隊を追加で派遣するとした。ただ、あくまで防衛のためであり、「ロシアと戦うつもりはない」とも強調した。

 ブリンケン国務長官は22日の記者会見で、24日に予定されていたロシアのラブロフ外相との会談を中止すると表明。ウクライナへの侵攻が「すでに始まっている」とし、現時点で会談する意味はないとした。

 バイデン氏は、外相会談後にプーチン氏と会談することで原則合意していた。しかし、サキ大統領報道官は22日の会見で、「現段階では計画にない」と中止となったことを明らかにした。

 バイデン氏は一方で、「何百万人もの人々に計り知れない苦しみをもたらす最悪のシナリオを回避する時間はまだある」とも強調し、外交的解決の余地が残されているとした。

(ワシントン・山崎洋介)