バイデン米政権発足1年 支持率低下 国際的信頼に影


アフガン「失敗」に批判集中

 バイデン米政権の発足から20日で1年。「米国は戻ってきた」をスローガンに掲げ、同盟関係や国際協調の修復に力を傾けた。対中国を念頭にした日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の強化などを推し進める一方、アフガニスタンからの撤収では失敗。国際的信頼の回復は遠い。

バイデン政権を取り巻く状況

バイデン政権を取り巻く状況

 ◇にじむ疲労感

 「なかなか大変な年だった」。ブリンケン国務長官は昨年末、1年間を振り返る記者会見で疲労感をにじませた。

 バイデン政権は発足初日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰や世界保健機関(WHO)からの脱退中止を発表。その後、ロシアと新戦略兵器削減条約(新START)延長で合意し、イランと核合意復帰に向けた間接交渉も開始した。

 トランプ政権末期に30%だった米国のリーダーシップに対する国際社会の支持率は、昨年8月初旬に49%に回復した。バンダービルト大のトーマス・シュワルツ教授(歴史学)は「大統領就任直後のバイデン氏は『トランプ氏ではない』という理由だけで国際社会から歓迎され、大きな支持を得た」と指摘する。

 ◇及第点ぎりぎり

 しかし、それも長くは続かなかった。バイデン氏は「もはや国益にかなわない」とアフガン駐留軍の早期撤収を強行。これがアフガン政府崩壊の引き金となり、各国は自国民の退避に奔走した。

 離陸前の米軍輸送機にアフガン市民がしがみつく映像も全世界に配信された。同盟重視を掲げる一方で、戦争終結を急いで連携を欠いたバイデン政権に対し、欧州諸国から批判が集中。「トランプ政権と大差ないのではないか」との見方が広まり、米国第一主義の再来への警戒が高まった。

 シュワルツ氏は「バイデン氏の支持率下落を招いたのは、新型コロナウイルス対策や高いインフレ率ではなく、アフガン撤収の失敗が原因だった」と分析。政権1年目の外交・安全保障分野の成績は「及第点として最低の『C』か『Cマイナス』だ」と批評した。

 ◇課題山積

 台湾への軍事圧力を強める中国やウクライナ侵攻の機会をうかがうロシアに加え、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮やイランへの対応など、前途には課題が山積している。

 バイデン政権は昨年12月、民主主義国の結集を図るとして公約に掲げていた「民主主義サミット」を開催した。権威主義国と位置付ける中露との対抗軸を打ち出したが、イデオロギーによる陣営分けは、気候変動や新型コロナなど共通の課題での多国間協力を阻害するとの指摘もある。

 米国内における民主主義の退潮や政治・社会の分極化が国際的信頼に影を落としている側面も否定できない。戦略国際問題研究所(CSIS)のスティーブン・モリソン上級副所長は「国内の不安定要素が米国のイメージを損ね、国際的信頼性を低下させている」とみる。

(ワシントン・時事)