ニカラグア 台湾と断交
中国と国交回復 サミット中に「対米共闘」
中米ニカラグア政府は9日、台湾と外交関係を断絶し、中国と国交を回復した。バイデン米政権の主催で9、10の両日に開かれている「民主主義サミット」に台湾も参加する中、サミットに招待されなかった共産党一党独裁体制の中国と強権政治が続くニカラグア反米政権が対米共闘をアピールした格好だ。
ニカラグアのモンカダ外相は「中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法的な政府で、台湾は中国の不可分の領土だ」とする声明を発表した。ニカラグアは1985年に中国と国交を結んだが、90年に断交して台湾と外交関係を結んでいた。
中国政府は10日、ニカラグア政府の決定を評価するとともに、天津市でニカラグア代表団と国交を回復する共同声明に署名した。両国は「一つの中国」原則を遵守することで合意した。
一方、米政府はニカラグアの決定について、オルテガ大統領が野党を実質的に排除して連続4選を果たした11月の大統領選挙を挙げて、「(台湾との断交は)民意を反映していない」と批判した。
台湾と外交関係を保つ国は、中国政府による切り崩しで近年大幅に減少している。2016年の時点では22カ国あったが、今回のニカラグアの断交により14カ国になった。
14カ国のうち、パラグアイやハイチなど中南米・カリブ海諸国が9カ国を占めているが、先の大統領選挙で「親中国派」が当選したホンジュラスも台湾との断交を示唆している。また、中国はパラグアイなどに対しても、ワクチン外交やインフラ支援で国交回復を呼びかけており、台湾は残りの国々のつなぎ止めに必死になっている。
台湾外交部(外務省)は10日、ニカラグアの断交発表を非難。蔡英文総統は「民主主義と自由を守り、民主主義のコミュニティーに台湾は参加し続ける」と、中国の圧力に屈しない姿勢を強調した。
中国はニカラグアとの国交回復をサミットにぶつけた形だが、共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は、中国版ツイッター「微博」で、中国は「民主主義サミット中、米政権にビンタを食らわせた」と投稿した。
(サンパウロ 綾村悟)