【上昇気流】ベンジャミン・フランクリンは「貧しきリチャードの暦」を作った


ベンジャミン・フランクリン

 米国の建国の父ベンジャミン・フランクリンは米北東部のフィラデルフィアで印刷業を営み、移住者のために「貧しきリチャードの暦」を作った。処世訓の書かれたカレンダーのいわば元祖で「天は自ら助くる者を助く」の名言が名高い。

 フランクリンが著した「アメリカに移住しようとする人々のための情報」(1760年)では、移住者は「セルフメイド・マン」(独立独行の人)であるべきで、出自や名門ではなく、何を行うかが重要であると諭している。

 同地は南部と違ってプランテーションに適さない土地柄だ。移住者の多くはピューリタンで「新しいエルサレム」の建設を目指し黙々と働いた。「貧しいリチャードが言うには」で始まる処世訓は、自営農民や手工業者らの励みになり、信仰心を高め米国の建国精神へと昇華した。

 古来、「勤め働く者の手はついに人を治める。怠る者は人に仕える」(旧約聖書・箴言)、「働かざる者、食うべからず」(新約聖書・テサロニケ人への第二の手紙)と勤労による自立が奨励された。フランクリンは徳への道と富への道が同一と説いたが、これは渋沢栄一の「道徳経済合一説」に通じる。

 来年のカレンダーを手に入れようと書店に出掛けた。動物版や自然版、絵画版などと並んで、数少ないが処世訓カレンダーが目に入り、フランクリンが思い浮かんだ。

 国際環境が一段と厳しくなりそうだ。自助、いや自衛力整備を怠り、他国に仕える日本にしたくない。