米 五輪外交ボイコット 中国の人権侵害に対抗
選手団は派遣
バイデン米政権は6日、来年2月の北京冬季五輪に政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。中国政府による新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(集団虐殺)や人権侵害を理由に挙げた。一方、中国外務省の趙立堅副報道局長は会見で「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、対抗措置を取ると反発した。
ホワイトハウスのサキ報道官は同日、「新疆ウイグル自治区におけるジェノサイドや人道に対する罪、その他の人権侵害を考慮し、バイデン政権は外交上もしくは正式の代表団を派遣しない」と発表。一方で、「この瞬間に備えてトレーニングを行っている選手にペナルティーを科すのは正しい措置だと思わない」として選手団の参加は認める考えを示した。
米議会では超党派で外交ボイコットを求める声が高まっていた。共和党のマイケル・マッコール下院議員は、「バイデン政権が最終的に北京五輪に政府関係者を送らない決断をしたことを喜ばしく思う。これはしばらく前から当然の選択だった」と表明。その上で、同盟・友好国にもボイコットを促すよう求めた。
サキ氏は、他国が北京五輪にどう対応すべきかについては「それぞれの国の判断に委ねる」とした。米メディアによると、英国、オーストラリア、カナダなども外交ボイコットを検討している。岸田文雄首相は7日、「国益の観点から自ら判断していきたい」と述べるにとどめた。
共和党議員の一部には、選手団も含めた完全なボイコットを求める意見もある。記者から外交ボイコットで十分かと問われたサキ氏は、政権はすでに中国の人権問題について先進7カ国(G7)や議会と協調した取り組みをしてきたとし、今回の対応について「人権侵害を考えれば、通常通りにすることはできないというメッセージだ」とその意義を強調した。
バイデン大統領は9、10両日、初となる「民主主義サミット」を開催する予定で、今回の措置はこれに先立ち中国の人権問題に取り組む姿勢を打ち出す狙いもあったとみられる。
2014年のソチ冬期五輪では、米国や英国、ドイツなどの政府関係者が開会式への出席を見合わせた。厳格な新型コロナウイルス感染対策の中で開催された今夏の東京五輪開会式には、米国からジル・バイデン大統領夫人が参加した。
(ワシントン・山崎洋介)