ペルー大統領選挙 急進左派カスティジョ氏当選
フジモリ氏 敗北を認める
南米ペルーの選管当局は19日、6月6日に実施された大統領選挙の決選投票について、急進左派で教員組合出身のペドロ・カスティジョ氏(51)の当選を確定した。就任式は28日に行われる予定。任期は5年。ペルー国営アンディナ通信が報じた。
中国と関係強化へ
決選投票は、カスティジョ氏と中道保守「フエルサ・ポプラル」党首でフジモリ元大統領の長女ケイコ・フジモリ氏(46)の2人による直接対決だった。
開票結果は、開票率100%の時点でカスティジョ氏の得票率50・13%に対してケイコ氏が49・87%の大接戦。ケイコ氏が、「カスティジョ陣営による明らかな不正投票があった」として、一部の票の無効化を訴えていたため、確定作業に1カ月以上もの遅れが生じていた。選管当局はケイコ氏の訴えを全て却下している。
ケイコ氏は同日、選管の発表に先立つ形で首都リマで記者会見を行い敗北を宣言したが、「選挙で不正が行われたのは確かだ」とも強調。今後は主要野党の党首としてカスティジョ氏と対決していく姿勢を明らかにした。
カスティジョ氏は、「ペルーの人々よ、歴史的な勝利をありがとう、共に差別なく権利が尊重される国を造ろう」と勝利宣言を行う一方、野党第1党の党首でもあるケイコ氏に対して「障壁を作らないように要請する」と牽制(けんせい)した。
カスティジョ氏が所属する「ペルー・リブレ」は、マルクス主義と社会革命を信奉する急進左派政党だ。大統領選挙と同時に行われた国会議員選挙で第1党に躍り出たが、カスティジョ氏と同様に初めての国政進出になる。カスティジョ氏も大統領選挙では泡沫候補にすぎなかったが、貧困層や政治に不信を抱く層の熱烈な支持を受けて主要候補に躍り出た。
当選を決めたカスティジョ氏だが、国政運営には多くの困難も待ち受ける。ペルーは現在、新型コロナウイルス変異株「ラムダ株」を中心としたパンデミックの最中にあり、人口比で世界最悪の死者数を出している。ワクチン確保などのコロナ対策は急務だ。
一方、ペルー経済の要となっているのは、銅など鉱物資源輸出だが、カスティジョ氏が選挙中に訴えた「資源国有化」のスローガンが、投資家の懸念材料になっている。
カスティジョ氏は、決選投票に向けて資源国有化の主張を取り下げたものの、依然として資源産業への課税強化による貧困対策を主張しており、投資活動が一時的に鈍化する恐れもある。
こうした中、カスティジョ氏は15日、首都リマにある中国大使館を訪問、中国大使と面会した。訪問の目的は、中国製ワクチンの供給や支援を求めたもの。カスティジョ氏が、海外の外交部と会うのは中国が初めて。中国を外交や経済の主要パートナーとして関係強化を打ち出したことになる。
南米では、ボリビアでも昨年10月に反米左派政権が誕生しており、コロナ禍の貧困拡大や経済不振は、南米各国で政情不安や急進左派の拡大につながっているのが現状だ。