米中の研究チームが推進 人・サル「融合」に懸念
共和党が実験禁止求める
「倫理の一線越え 命の尊厳犯す」
人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)をサルの胚に注入する実験が4月、米国と中国の研究所の協力で行われたことを受けて、米共和党議員らが、「人の命への尊厳を犯す」と懸念を表明、実験の禁止を求めている。民主党は、難病治療に貢献するとして推進の構えだ。
実験は、カリフォルニア州ラホヤにあるソーク研究所、中国・昆明理工大などの共同研究チームが行ったもので、人とサルの細胞を融合させた「キメラ」胚を、19日間にわたって培養することに成功したという。
米国では、このような研究への連邦補助金を一時的に停止している。しかし、議会では、中国に対抗するため、研究・開発に2000億㌦の大規模な予算を投入することが議論されており、その中でこの停止措置を見直す動きが出ている。
共和党のマイク・ブラウン上院議員は、このような人と動物の融合実験は、倫理的な一線を越え、人の命の尊厳を犯すと指摘、予算案の修正を求めている。
ブラウン氏は、「DNA分析で得た成果を(難病の治療などに)生かそうという純粋な興味は分かる」とした上で、「それ以外のところでも利用しようという誘惑が生じる」可能性があると、技術の悪用に懸念を表明した。
ブラウン氏らは先月下旬、人・動物間のキメラの研究を阻止するため、予算案の修正を求めたが、修正案は小差で否決された。
共和党のジェームズ・ランクフォード上院議員は、「米国は実験のために動物と人を融合させることが正しいとは考えていないが、中国は、それを可能にし、移植し、子供へと成長させる道へと進んでいる」と危機感をあらわにしている。
ブラウン氏ら5人の上院議員と、25人の下院議員は先月、国立衛生研究所(NIH)に書簡を送り、キメラ研究に対する懸念を伝えるとともに、連邦政府機関としての倫理面での分析についての詳細な情報を要求した。
NIHからの返答は得られていないが、NIHの協力で、学術機関「全米アカデミーズ」が、人・動物キメラの倫理的問題の検証を行っていたことが明らかになっている。検証にはソーク研究所も参加しており、人・動物融合実験は、恩恵をもたらす可能性があるが、「科学の現状から大きく逸脱しているのではないかという懸念を呼び起こさないよう」一般大衆の関心を引く用語を使用すべきでないと結論付けている。
民主党はキメラ研究推進の構えで、パティー・マレー上院議員は、共和党の主張は、科学ではなく、思想に基づくものであり、難病の治療法発見への障害になると非難している。
ブラウン氏ら共和党議員は、「家族研究協議会」(FRC)、「スーザン・B・アンソニーリスト」など中絶反対の保守系権利擁護団体に呼び掛け、この問題の周知に取り組んでいる。
(ワシントン・タイムズ特約)