米政権 北朝鮮政策の見直し完了
外交で完全非核化目指す
「現実的アプローチ」採用
サキ米大統領報道官は4月30日、バイデン政権が進めていた対北朝鮮政策の見直しが完了したと発表した。詳細は明らかにしなかったが、朝鮮半島の完全な非核化に向け「調整された現実的なアプローチで、北朝鮮との外交を模索する」と語った。米メディアは、バイデン政権が長期的な非核化に向けた「段階的な合意」を目指す方針だと報じた。
サキ氏は大統領専用機で記者団に「われわれの目標が、朝鮮半島の完全な非核化であることに変わりはない」と強調。「今後、すべての段階において同盟国や友好国との協議は続ける」として、日本や韓国などと連携しつつ政策を進める考えを示した。
また歴代政権の非核化の取り組みが結果を出せなかったとして、「グランドバーゲン(一括取引)の達成に焦点を合わせたり、戦略的忍耐に頼ったりすることはない」と表明。完全な非核化の見返りに制裁を全面解除するトランプ政権の「グランドバーゲン」や、北朝鮮が非核化への具体的な措置を講じない限り対話に応じないオバマ政権の「戦略的忍耐」とは異なる方針を採用する考えを示した。
米紙ワシントン・ポストは同日、バイデン政権の新たな北朝鮮政策について「完全な非核化に向け、段階的な合意を目指す」方針だと報じた。米政府高官は同紙に「究極の目標である非核化」に向け、「特定の段階ごとに(制裁の)緩和を提供する、慎重で調整されたアプローチ」を採用すると語った。
サキ氏は北朝鮮政策見直しの過程で「同盟国や友好国と緊密に協議しており、菅(義偉)首相との首脳会談でも話し合った。彼らの意見は、見直し作業で役割を果たした」と強調。バイデン氏は5月21日、韓国の文在寅大統領と会談する。
米政府は2月中旬以降、北朝鮮当局との接触を試みたが、北朝鮮側は「米国の時間稼ぎに応じる必要はない。今後も米国の接触の試みを無視する」などとして拒否する立場を示した。北朝鮮は3月下旬、国連安全保障理事会の決議違反となる弾道ミサイルの発射を実行した。
米政府高官はワシントン・ポスト紙に、北朝鮮に新たなアプローチについて説明する予定だと語ったが、短期的には北朝鮮による挑発行為を防ぐことは困難との見方を示した。
(ワシントン 山崎洋介)