キューバ ラウル氏が正式引退、カストロ時代に幕
共産党一党独裁が続くカリブ海の島国キューバで19日、第8回共産党大会が最終日を迎え、退任を表明しているラウル・カストロ第1書記(89)の後任として、ミゲル・ディアスカネル大統領(61)が選出された。第1書記は共産党トップに当たる。
ラウル氏は、親米バチスタ政権を倒した1959年のキューバ革命以降、兄の故フィデル・カストロ元国家評議会議長と共に62年にわたってキューバを統治してきた。
キューバ共産党が支配する国のトップは、長年にわたって兄のフィデル氏が務め、ラウル氏はナンバー2の実務家としてフィデル氏を支えてきた。その後、2008年にフィデル氏が健康状態の悪化で引退すると、ラウル氏が国家評議会議長や第1書記を務めてきた。
カリスマ性の高いフィデル氏の陰に隠れがちなラウル氏だが、15年には米国との国交回復を実現、市場原理を導入した経済改革などの功績も残した。
一方、今回の党大会では、ラウル氏の他にも世代交代が進み、キューバ革命を経験した「革命世代」の幹部は、全て党の要職から退いた。
今後は、18年4月に国家評議会議長をラウル氏から引き継いだディアスカネル氏が新体制を牽引(けんいん)することになる。ディアスカネル氏は、ラウル氏から「より高い地位に上がる資格を全て備えている」と高い評価を受けており、国家評議会議長に代わって新設された大統領職と共に、第1書記の地位を兼任することになる。
ディアスカネル氏は、「革命継続のために党を守り続ける」として、カストロ兄弟が築いてきたキューバ共産党による独裁体制を継続する意向を表明、戦略的な重要事項ではラウル氏に相談するとしている。
一方、キューバ国内は、新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の激減、米国による経済制裁、インフレなどで経済が疲弊している。昨年の経済成長率はマイナス11%にまで落ち込み、中南米・カリブ海諸国の中でも最悪のレベルだ。
東西冷戦末期の東側諸国(社会主義諸国)の自壊やソ連の崩壊などを横目に長期政権を保ってきたキューバだが、経済制裁を続ける米国との関係改善も必要になっており、革命世代後の新体制となったキューバの今後の体制維持に向けた動向は予断を許さない。
(サンパウロ 綾村悟)