米新国連大使 中国の影響力拡大を阻止せよ


 米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド元国務次官補(アフリカ担当)が新国連大使となった。

 アフリカ外交の実務に精通する同氏の就任は、中国への対抗に向けたアフリカ諸国との関係強化が期待される。

 援助でアフリカ取り込む

 黒人女性のトーマスグリーンフィールド氏は、オバマ元政権で2013~17年に国務次官補を務めるなど35年のキャリアがあるベテラン外交官。ナイジェリアやケニア、リベリアなどに赴任した経歴がある。

 米国の国連大使は5代続けて女性となった。トーマスグリーンフィールド氏は今年1月の米議会での公聴会で、国連で存在感を増す中国は「戦略上の競争相手であり、われわれの安全保障と繁栄、価値観への脅威だ」として「対抗することを約束する」と明言した。

 中国は15ある国連の専門機関のうち、国連工業開発機関(UNIDO)や国際民間航空機関(ICAO)、国際電気通信連合(ITU)、国連食糧農業機関(FAO)の4機関のトップの座を務め、自国に有利なルール作りを推進している。中国がアフリカなどの発展途上国に対して資金力に物を言わせた援助外交を展開し、選挙での多数派工作が奏功したためだ。

 また20年10月には、人権問題を扱う国連総会第3委員会で、米欧を中心とする39カ国が共同声明で中国による香港の自治侵害などについて「重大な懸念」を表明した。これに対して「香港問題は中国の内政問題だ」として中国を擁護する共同声明には50カ国以上が署名。声明はパキスタンが主導したが、中国と緊密に連携していたとの見方が強い。署名国の約半分を占めたのがアフリカ諸国だった。

 同氏は国連での中国の影響力を抑えるカギはアフリカとの緊密な関係だと指摘。「私がアフリカ大陸全体で築いた非常に強い関係を生かす」と力説した。アフリカは安全保障理事会非常任理事国の10枠のうち3枠を持つ。取り急ぎ非常任理事国を務めるチュニジア、ニジェール、ケニアとの接触が求められる。

 米国は3月、安保理の議長国を務める。ミャンマー対応、人権や気候変動、新型コロナウイルス対策など問題山積だ。同氏は公聴会で中国によるウイグル族弾圧について「残虐なことが起きており、実情を認識する必要がある」と強調した。中国の“民族浄化”を許さないためにも、中国の支持基盤となっているアフリカ諸国を切り崩すことが不可欠だ。

 いずれにせよ、国連で存在感を増す中国への対応が最大の焦点の一つとなる。中国に権威主義的体制を正当化するための足場として国連を利用させてはならない。バイデン政権としては、国連の場で外交を担う大使をサポートし、中国の影響力拡大を阻止する対抗策を講じなければならない。

 日本は安保理改革主導を

 日本も米国と協力して中国を抑える必要がある。このためには、中国が常任理事国を務める安保理の改革や、中国が日本に武力行使するための根拠としかねない国連憲章の旧敵国条項の削除なども主導すべきだ。