ペルー閣僚ら相次ぎ辞任


抜け駆け接種で 背景に中国ワクチン外交

 南米ペルーからの報道によると、同国のアステテ外相が14日、中国製の新型コロナウイルス対応ワクチンを医療従事者などの優先接種より先に受けたことは「深刻な間違いだった」として、辞任する意向を発表した。辞表は、同日付でサガスティ大統領に受理されたという。

ペルーのビスカラ元大統領=2020年11月、リマ(AFP時事)

ペルーのビスカラ元大統領=2020年11月、リマ(AFP時事)

 アステテ外相は1月、最終治験を担当している国内の大学に中国医薬集団(シノファーム)から送られたワクチンの接種を受けた。接種されたワクチンは治験用ではなく、シノファームから別枠で贈呈されたワクチンだったという。

 ペルーでは11日にも、ビスカラ元大統領が汚職疑惑で罷免された昨年11月より前の在職中の10月に中国製ワクチンの「抜け駆け」接種を行っていたことが発覚。同様に接種を受けていた保健相や副保健相など政府高官らが、12日までに相次いで辞任するスキャンダルとなっていた。

 サガスティ大統領は、他にも「抜け駆け」接種を受けた政府高官がいる可能性が高いとみて調査を行うことを表明、すでに検察当局が捜査に乗り出している。

サガスティ氏(ペルー大統領府提供・AFP時事)

サガスティ氏(ペルー大統領府提供・AFP時事)

 同国では、9日に医療従事者らを対象としたシノファーム製ワクチンの優先接種を開始したばかり。新型コロナとの闘いで最前線に立つ医師や看護師らの犠牲は、首都リマなどを中心に300人近くにも上っており、これら医療従事者や高齢者に先駆けてワクチン接種を受けた政府高官には、国民やメディアから厳しい批判が上がっている。

 南米では、中国やロシアが積極的な「ワクチン外交」を繰り広げており、ペルーでは、中国政府や企業がワクチンを売り込む過程で政府関係者にワクチンの優先接種を持ち掛けていた疑惑も持ち上がっている。

 ブラジルやアルゼンチンなどでも中国やロシア製のワクチンを導入する動きが広がっており、ペルーと同様の事例がないか追及する動きも出てきそうだ。